研究課題/領域番号 |
15K04881
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
新國 亮 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00401878)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 空間グラフ / 結び目 / 絡み目 / 不変量 |
研究実績の概要 |
1. 任意の2つの有向結び目のJones多項式の差は, 必ず (t-1)^{2}(t^{2}+t+1) で割り切れることがV. F. R. Jonesによって示されていたが, この事実を, 結び目のVassiliev不変量と深く関係する C_{n} 同値の立場から, 次のように一般化した: (1) 2つの有向絡み目が C_{2} 同値ならば, そのJones多項式の差は (t-1)^{2}(t^{2}+t+1) で割り切れる. (2) 3以上の n に対し, 2つの有向絡み目が C_{n} 同値ならば, そのJones多項式の差は (t-1)^{n}(t^{2}+t+1)(t^{2}+1) で割り切れる. (3) 3以上の n に対し, ある2つの互いに C_{n} 同値な有向結び目の組で, そのJones多項式の差がちょうど (t-1)^{n}(t^{2}+t+1)(t^{2}+1) であるものが存在する. 応用として, 3以上の n に対し, 互いに C_{n} 同値な2つの絡み目のConway多項式のn次の係数の差の2を法とした値, 及びJones多項式の1におけるn階微分係数の差の 6n! を法とした値がそれぞれ0となるという, 宮澤治子により示された事実の簡潔な別証明を与えた.
2. 2015年10月24, 25日にカリフォルニア州立大学フラトン校で開催された AMS Fall Western Sectional Meeting における Special Session on Spatial Graphs の組織委員を務めた. 同じく組織委員の E. Flapan, T. Mattman, B. Mellor, R. Naimi と共同で, 空間グラフ理論の近年の進展に関する総説を執筆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有向絡み目のJones多項式, 及びそれから導かれるVassiliev不変量は, 空間グラフの分類問題や, 各種内在性の問題にも応用される重要な不変量である. 今回, 絡み目のJones多項式を縛る関係式を, Vassiliev不変量と深く関係する C_{n} 同値の立場から調べて一定の成果を挙げることができた. また, 2015年10月24, 25日にカリフォルニア州立大学フラトン校における AMS Fall Western Sectional Meeting において, Special Session on Spatial Graphs を予定通り開催し, 最新の研究成果発表に加え, 国際的な研究交流を実行できた(セッションには米国, 日本, 韓国, UAEからの参加があった). 更にはこのセッションの組織委員との共同執筆で, 空間グラフ理論の近年の進展をまとめた総説を報告できた. 得られた成果は迅速に国内外における研究集会やセミナー, 更にはarXivなどインターネット上で随時公表している.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り, 空間グラフの代数的不変量の研究を推進する. 特に2016年度は, 8月に第4回空間グラフ理論国際研究集会「International Workshop on Spatial Graphs 2016」の開催が予定されており, 申請者は組織委員を務めるとともに, 海外の空間グラフ理論研究者たちとの共同研究及び研究交流を行なう. また, 同ワークショップに引き続いて, 東京工業大学で開催される国際ワークショップ「Topology and graphs in polymer chemistry」での講演も予定しており, 高分子化学における分子トポロジーへの応用研究を推進する. 研究成果は国内外のセミナー, 研究集会, シンポジウムで随時報告するとともに, 速やかに学術論文にまとめる. プレプリントの段階でウェブ上のプレプリントサーバーであるarXiv.org で公開するとともに, 学術雑誌にて公的に発表する. また, ウェブ上の学術検索サービス Google Scholar, 研究者向けソーシャルネットワークサービス ResearchGate にて, 研究成果を一般に公開する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年8月に日本・東京で開催される第4回空間グラフ理論国際ワークショップ「International Workshop on Spatial Graphs 2016」に掛る経費に, 本年度に配分された直接経費において180,000円あまりを未使用として回すことにしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
第4回空間グラフ理論国際ワークショップ「International Workshop on Spatial Graphs 2016」(2016年8月)において, 海外の研究者の参加にかかる旅費の補助を当該研究経費によって行なう.
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