研究課題/領域番号 |
15K04881
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
新國 亮 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (00401878)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 空間グラフ / 結び目 / 絡み目 |
研究実績の概要 |
1.ある型の3価グラフについて,その同じ空間埋め込みを表す平面上の2つの空間グラフ図式が正則イソトピックであるための必要十分条件を, 各結び目成分の回転数,交差符号和,及び各頂点の像から決まる不変量によって与えた.応用として,この型のグラフについて空間グラフの調整図式の概念を導入し,調整図式の正則イソトピー不変量は,もとの空間グラフのアンビエント・イソトピー不変量となることを示した.これはKauffmanによる結び目・絡み目に対する同様の基本原理の空間グラフへの拡張である.
2.空間8頂点完全グラフのHamiltonサイクル結び目について,それらのConway多項式の2次の係数の総和は6を法として3であることが知られていたが,更に5-サイクル結び目のConway多項式の2次の係数の総和を引くと21以上であることを示した(一部は森下央子氏(東京女子大学)との共同研究).応用として,線形空間8頂点完全グラフのHamiltonサイクル結び目のConway多項式の2次の係数の総和は必ず21以上であることを示した.また,21であるための必要十分条件,27であるための必要十分条件を,含まれる2成分絡み目たちの絡み数の関係式で与えた.
3.2017年7月27日に米国・シカゴで開催された MAA MathFest 2017 における空間グラフセッション「Session on Spatial Graph Theory」にて招待講演者を務めるとともに,Erica Flapan氏(Pomona College), Kenji Kozai氏(Rose-Hulman Institute of Technology)との研究打ち合わせを行なった.また,2018年2月26日に韓国の Hanyang University にて招待講演を行なうとともに,Youngsik Huh氏との研究打ち合わせを行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べた1,2の成果は,当初の想定以上に研究が大きく進展した結果得られたものであり,更なる成果を得つつある.また,幾つかの国際共同研究では,分子トポロジーへの応用を目指す空間グラフの研究,特に空間グラフの階層構造の解析に資するものとして,研究を深化させつつある.
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今後の研究の推進方策 |
当該研究課題の研究をより精緻に達成するため,補助事業期間を1年延長し,空間グラフの代数的不変量の研究を推進する.特に空間グラフの(ねじれ)Alexander不変量の研究を推し進め,空間グラフの分類に帰着される種々の幾何学的対象の分類及びそれらの階層構造の解析に資する成果を追求する.研究成果は国内外のセミナー・研究集会・シンポジウムで随時報告するとともに,速やかに学術論文にまとめる.プレプリントの段階でウェブ上のプレプリントサーバーである arXiv.org で公開するとともに,学術雑誌にて公的に発表する.また,ウェブ上の学術検索サービス Google Scholor,研究者向けソーシャルネットワークサービス ResearchGate にて,研究成果を一般に公開する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度において,8月に早稲田大学で開催された国際会議「International Workshop on Spatial Graphs 2016」に参加する海外研究者の旅費の補助を中心に使用予定であったが,海外からの参加者への補助にかかる費用が予想よりも低額で済んだ為,2017年度使用額が生じた.その分を2017年7月の米国出張(MAA MathFest 2017における招待講演,及び海外研究者との共同研究打ち合わせ)等に使用したが,一方で当該の研究が大きく進展したため,研究目的のより精緻な達成のために,補助事業期間を延長して次年度に使用することとした.研究成果発表及び国内外の共同研究打ち合わせに使用する.
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