現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲージ群のホモトピー型の具体的な分類は、これまで構造群がランクの低い(ほとんどがランク2以下)のリー群の場合にのみ行われてきた。しかし、最近、論文 [1] においてS.D. Theriault氏が特殊ユニタリー群SU(n)を構造群とする4次元球面上の主束に対するゲージ群のp局所ホモトピー型の分類を行なった。そこでキーとなったのは、SU(n)の中のある種のSamelson積の位数の決定であった。Theriault氏は、そのために、戸田宏氏によるBott周期性の証明に用いられた、複素射影空間に関する写像を使った。しかし、この手法はp局所でしか通用せず、今後の発展には繋がらないものである。私と連携研究者・岸本大祐氏は、同じSamelson積の位数は、非安定K理論呼ばれる手法を用いても決定できることを発見し、さらに、その手法はTheriault氏のものでは不可能だったシンプレクティック群の場合や、p局所でない場合にも通用することに気づいた。そこで、この手法を用いてSp(n)-ゲージ群(4次元球面上の主Sp(n)束のゲージ群)のホモトピー型に関するW.A. Sutherlandの結果を改良し、さらに、その改良された不変量と、あるSamelson積とを関係づけることにより、Sp(n)-ゲージ群のp局所ホモトピー型を分類した。この結果は重要なものであり、かつ、その手法は古典群以外にも適用可能である。したがって、進歩状況はおおむね順調であると言える。 [1] S.D. Thriault, “Odd primary homotopy types of SU(n)-gauge groups”, Algebr. Geom. Topol. 17 (2017), o. 2, 1131-1150.
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今後の研究の推進方策 |
(1)非安定K理論はゲージ群のホモトピー型の分類において重要であるだけでなく、より一般に、Samelson積の計算が必要な場面で重要な手法である。非安定K理論はもともと古典群に対してのみ考えられていたが、最近、論文 [1] において、例外型リー群にも、その表現を考えることにより応用可能であることが示された。そこで、今後の研究の流れの一つとして、例外型リー群に関するゲージ群のホモトピー型の分類を、非安定K理論を応用することで行うというものがあげられる。 (2)論文 [2] において4次元球面上の主Sp(n)束のゲージ群のホモトピー型が分類されている。このように、これまでは4次元球面上の主束のゲージ群が考えられることが多かったが、今後の研究の方針として、こう次元の球面、もしくは、4次元多様体に付随するゲージ群のホモトピー型の分類というものがあげられる。特に、4次元多様体に関しては、単連結やスピン多様体の場合はゲージ群のホモトピー分解が知られており、4次元球面の場合に帰着されるので、非単連結やスピンでない場合を考えることになる。 [1] S. Hasui, D. Kishimoto, T. Miyauchim, and A. Ohsita, “Samelson products in quasi-p-regular exceptional Lie groups”, Homology Homotopy Appl. 20 (2018), 185-208. [2] D. Kishimoto and A. Kono, “On the homotopy type of Sp(n) gauge groups”, arXiv:1803.06477.
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