研究実績の概要 |
本研究の目的は、幾何学的群論において重要な群である無限離散CAT(0)群の研究である。特に、CAT(0)群の幾何的に作用するCAT(0)空間の位相的性質あるいは Gromovが提案したCoarse的な性質の研究である。当該年度は高次元n次元メンガー普遍空間あるいはシルピンスキー普遍空間と同相な境界をもつコクセター群とその群が幾何的に作用するCAT(0)空間の構成についての研究を主に推し進めた。BorsukとUlamによって導入された空間の対称積は,通常の積空間より複雑な空間、あるいは積空間とは違う空間になるため多くの研究者によって研究がなされてきた。CAT(0)空間の対称積にどんな群が幾何的に作用するかは興味深い問題であり、高次元メンガー普遍空間を境界にもつ幾何学的群の構成に応用される可能性がある。そのため測地距離空間 X のn-対称積Fn(X)の等長写像群とその元の空間Xの等長写像群との関係を調べることは重要だと思われる。まず、基本的なp-距離をもつq次元(無限次元も含む)バナッハ空間 L(p,q) のn-対称積 Fn(L(p,q))の等長写像群を調べ、一部の無限次元を除いて、nが3以上のときこの等長写像群はL(p,q) の等長写像群と同型であり、n = 2のときに自然な写像において同型でない群があることが分かったが、最近の研究からある幾何的な条件をもつ測地距離空間も同様な結果が得られると予想される。つまりnが3以上ならば、測地距離空間 X のn-対称積 Fn(X)の等長写像群はXの等長写像群と同型だと予想されるが、2-対称積 F2(X)の等長写像群はXの等長写像群と異なると予想されるので、n = 2のときが特に興味深い。上記のことから、q次元ポアンカレ空間 H の対称積 F2(H) の等長写像群がどのような群になっているかは非常に興味深い問題である。
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