平成29年度は,群や量子群のvon Neumann環への作用について考察した.特に接合積von Neumann環の中心列環の記述を得た.これによってこれまで知られていたいくつかの結果(超積のvon Neumann環の型の決定など)に別証明を与えることができる.群の作用とは異なり量子群については,元のvon Neumann環への作用を超積に持ち上げても,中心列環に作用しないのだが,中心列環を含むような最小の不変von Neumann部分環について考察し,自然な超積状態のモジュラー自己同型群を記述した.これは中心的自由な作用の研究において重要な道具となることが期待できる.また,fullなvon Neumann因子環へのコンパクト群の各点外部的な作用について考察した.一般的な状況については未解決だが,作用に強い条件を課せば接合積について諸性質が明らかとなった.コンパクト量子群の場合に一般化することが今後の課題である.比較的弱い条件下においては,Kac型の従順離散量子群が従順連続von Neumann環に作用するとき,中心列環,あるいはもっと弱く超積環への作用が必ず非自明な固定点環を持つことを示すことに帰着されるが,この問題も技術的に難しい点があり,未だどのアプローチでも成功を見ていない.鍵となると考えられるのはRohlin性であるが,これを一般の離散量子群に対して定式化することも今後の課題である.
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