研究課題/領域番号 |
15K04890
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
中里 博 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (10188922)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 数域 / シフト行列 / 代数曲線 / 特異点 / 縮小作用素 / ポンスレの定理 / 行列式表現 / 双曲的多項式 |
研究実績の概要 |
行列やヒルベルト空間における連続線形作用素を数域や数域半径を用いて解析した。特に、行列の数域の境界を代数曲線論的手法で、特異点などに注目して解析した。 重みつきシフト作用素の数域半径については、摂動論的方法により、摂動を有限階の作用素として与えると数域半径がどう変化するかを行列を使って解明した。この研究は台湾の東呉大学(台北市、私立大学)教授の簡茂丁氏および国立モンゴル大学(ウランバートル)の Undrakh助手, Vandanjav教授との共同研究として行なった。また、簡教授との共同研究により、重みつき巡回行列に付随する代数曲線の特異点を解析したほか、縮小行列の数域についてもその幾何学的性質をポンスレの閉形定理として知られている代数幾何学の有名な結果に類似の特性が現れることに注目して解析した。また、簡教授との共同研究で双曲型偏微分方作用素のシンボルとして現れる多項式で定義される曲線の双対曲線として行列の数域の境界を特徴づける問題の解明を逆問題の観点から調べた。先に双曲的な性質を有する曲線の双対曲線が与えられたとき、それに対応する行列が存在するという2005年に米国のHelton氏とイスラエルのVinnikov氏によって証明された定理に関連して回転対称性を有する双曲的な曲線に対応する行列式表現について解明を行った。高階の数域など量子計算における誤り訂正に寄与すると考えられている対象についても特異点解析の観点から解明を行い幾何学的な成果を得た。成果は後述の計6編の論文として審査つきの専門雑誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高階の数域と量子計算における誤り訂正の方法が結びつくことが知られており、ポンスレ型の定理に関してこの分野に貢献するなど、応用にむけても成果があった。行列の数域の境界を双対曲線を用いて解析する方法に基礎理論の面で大きな前進があった。複素解析的な方法の導入でも成果があり新しい展開となった。
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今後の研究の推進方策 |
代数曲線的な手法による行列の数域の解明は、これまでの研究の骨格を成すものであり、これを継続していく。複素解析的方法を、コンピューターソフトウエアのメイプルのリーマン行列計算用のパッケージの使用と組み合わせて研究に使うなど、新たな研究の展開によりこれまでとは違った、より発見的で今後の研究の出発点となるような成果をあげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は、予定していた国際研究集会への参加を、所属大学における夏季の広報活動のため取りやめるという事情で、旅費の支出が予定よりも少なかったため未使用の金額が生じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度は、国際研究集会に2回参加する予定であり旅費が2015年度に比べ大幅に増加する予定である。また、研究遂行のためのソフトウエア購入も予定しており、研究課題申請の予算使用計画に2016年度末には到達する予定である。
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