研究実績の概要 |
行列および線形作用素の数域について曲線論的手法により研究を行い量子計算における誤り訂正や核磁気共鳴装置の制御の精度向上などの応用に結びつけることを目的に研究遂行を行い、凸集合になることが既に知られている数域の境界を決定するアルゴリズムの簡易化と根本的な理解に結びつく成果が得られた。行列の数域は、行列をエルミット行列と歪エルミット行列の和に分解することにより2つの非可換なエルミット行列の同時特性多項式により決定されることが1950年代には知られていた。この逆も成り立ち,それを使って行列の数域を特徴づけることが50年あまりの未解決問題であったが、10年程前にチェコ、米国などの数学者により解決されたが、なお多くの関連した未解決問題が残されておりそのいくつかを解決した。数域から行列や作用素をユニタリ同値の範囲内で決定することはできないことが分かっているが、与えられた数域を実現するような行列を構成する標準的な方法が分かってきた。成果を線形解析の伝統的な雑誌数誌に発表した。行列のエルミット部分と歪エルミット部分がどう関係しているかは作用素の構造を理解する上で基本的であり、量子力学におけるエンタングルメントの解明とも関係している。数域から出発してテープリッツ行列、重みつきシフト行列、数域がポンスレ型の性質を持つ特殊な縮小行列などに対して数域の逆問題に関して、曲線が特異点を持たない場合の肯定的な結論を導きと特異的を持つ場合につき予想に反する否定的な例を構成することができた。また、重みつきシフト行列についてはそれに付随する代数曲線から逆にこの行列を再構成することに関して未解決問題があったが最近この課題を米国とギリシャの研究者が肯定的に解決した。その結果をさらに改良する結果に向けて筆者とその指導学生の論文で展望が開けた。重みに対称性を持たせるという改良の展望が立ったので実現を目指したい。
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