研究課題/領域番号 |
15K04893
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
WILLOX Ralph 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (20361610)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 離散可積分系 / 超離散可積分系 / 特異点閉じ込め方 / ダルブー変換 |
研究実績の概要 |
初年度である平成27年度には、複素射影平面上の写像に関するテーマから研究に着手した。特に、複素射影平面上の双有理写像の可積分性判定について研究を行い、 写像における係数の非自励化により、 その写像の代数的エントロピーを極めて容易に求める手法を開発した。特に、写像が非自明なゲージ自由度を持つとき、係数の非自励化から得られ情報が決定的でない場合があることに気付き、その問題を解決する方法を提唱した。さらに、その関連で、特異点閉じ込めという性質を持たない写像のエントロピーが、特異点のパターンに対する極限操作で計算できる場合もあることを示した。これらの結果を発表する論文は既に2編出版された。
超離散系のCauchy問題については、 超離散KdV方程式と関連している「箱玉系 」という有名な超離散可積分系の作用・角変数による線形化を考察し、約10年前に国場・ 高木・竹野内に提唱された表現論的かつ組合せ論的な意味を持つ「rigged configuration」に基づく線形化に初等的な新しい証明を与えた。さらに、この証明を高橋・松木平が提出した運搬車付き箱玉系の作用・角変数による線形化へ拡張することにも成功し、その超離散系に対するCauchy問題を解くことができた。この結果を発表する論文は現在作成中である。
2次元の格子上で定義される離散可積分系の簡約という研究テーマ、特に、2次元の離散戸田格子のB-型簡約については、部分的な結果を得ることができた。新しく構成した離散系とY.Surisが以前に1次元の格子上で構成したA_2(2)-型の対称性を持つ常差分系との関係を明らかにすることは既にできたが、方程式系の解を与えるタウ関数の代数的構造はまだ明らかになっていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
複素射影平面上の写像に関する研究は明らかに当初の計画より早く進んでおり、特異点閉じ込めという性質を持たない写像の扱いなどの当初の計画上で28年度に考察する予定であった問題についても、既に成果を得ている。
超離散可積分系についての研究も当初の計画より早く進んでおり、さらに、当初予期していなかった「運搬車付きの箱玉系」への拡張にも成功していることになった。
2次元の離散可積分系の簡約についての研究は計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、研究計画の通り、まず有界の次数の増大を持つ写像及び、特異点閉じ込めという性質を持たない、線形化可能な写像などを含む写像のクラスにおける特異点の性質を考察する予定である。 さらに、ここまで開発してきた数学的手法と可積分性判定法が2階以上の高次写像にも適用できるかという問題も考察する予定である。 超離散系の代数的構造についての研究も28年度に続けたい。特に、27年度に箱玉系について得た結果を一般のA1(1)型の箱玉系に拡張し、その結果を特殊な場合に実数上の系まで拡張できるかという問題を考える予定である。同様の手段が超離散 sine-Gordon方程式にも適用できるかという問題を考察する予定もある。 2次元の格子上で定義されている離散可積分系の簡約についての研究も今年度続けて行う予定である。
さらに、平成28年にカナダで行われる「Symmetries and Integrability of Difference Equations」 (SIDE) 国際研究集会(各国持ち回りで2年に一回に行われる)で複素射影平面上の写像に関する研究成果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度に購入したパソコンの単位価格が申請当時の値段より数千円安くなったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額を28年度にパソコン関連品に充てる予定である。
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