最終年度の平成29年度にも、本研究プロジェクトの重要な課題の一つである、離散力学系における可積分性の判定法というテーマについて研究を行った.東京大学・大学院数理科学研究科の Takafumi Mase,及びパリ第7大学の Basile Grammaticos と Alfred Ramani との共同研究で,昨年新しく開発した複素平面上の双有理写像の可積分性が簡単に判定できる手法を,今年に入ってさらに拡張し,特異点閉じ込めという性質を持たない写像の場合にも写像の力学系次数(dynamical degree)が容易に計算できる方法を提唱した.この結果を発表する論文は,現在,投稿中である.
離散可積分系の幾何学的な構造というテーマに関しては、昨年の続きで,E_8^{(1)}の対称性を持つ離散パンルヴェ方程式について、Grammaticos氏と Ramani氏と共同研究を行い,E_8^{(1)}の対称性を持つ q-型離散パンルヴェ方程式の様々な退化から得られる離散可積分系を考察した結果,新しい線形化可能な離散系,及びそれらの非自励化と具体的な線形化を2組,そして新しい離散パンルヴェ方程式を2つも発見した.この結果を発表する論文はすでにJournal of Mathematical Physicsに掲載済みである. さらに,ある意味で上述の結果の逆方向で,QRT-型の写像から出発したとき,その写像を自励極限に含む E_8^{(1)}対称性の離散パンルヴェ方程式,及びそれらの方程式の退化配列(cascade)に属する離散パンルヴェ方程式をすべて系統的に構築できる手法を考案した.この方法をいくつかの具体例をあげながら解説する論文はすでに同じJournal of Mathematical Physicsに掲載済みである.
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