本研究課題では,Lisovyy らウクライナのグループによって構成されたパンルヴェ方程式の超越解の具体的構成を他の方程式に拡張することをひとつの目標としてあげてきたが,神保道夫氏,名古屋創氏との共同研究で,qPVI と呼ばれるq差分パンルヴェ方程式の超越解を構成することに成功した. パンルヴェ方程式の超越解についての証明は,少なくとも3種類知られているが,そのうちモノドロミー保存変形の変形方程式系の解を5点共形ブロックを使って構成し,その展開から解を求めるという方法のq差分類似を考えた. 元の証明には,ヴィラソロ代数の表現論が重要な役割を果たしているのであるが,q類似の場合には,対応する gl_1 量子トロイダル代数,あるいは Ding-庵原-三木代数と呼ばれるものが現れる.しかし,現在のところ,表現論がヴィラソロ代数ほどには整備されておらず,いくつか元の証明の議論がそのままでは使えない部分があり,その部分は解の具体的な表示を使った組み合わせ的な議論で置き換えて証明が完成した. この解の表示式には,AGT対応と呼ばれる2次元共形場理論と4次元ゲージ理論との間の対応が関係しており,その意味でも興味深い結果であると思われる. 楕円函数や超幾何函数の次の特殊函数として導出されたパンルヴェ方程式は,1世紀もの間,一般の解の具体的な表示なしにその研究が続けられてきた.ここにきて,ようやく楕円函数や超幾何函数の一般化としての研究が始まるという気がしてワクワクしている. 2018 年度は,2017 年度までに得られた上記の結果を,4月に中国三亜にて行われた国際研究集会で発表し,そこで繰越分の助成金を使って本研究課題を終了した.
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