研究課題/領域番号 |
15K04896
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
松本 健吾 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (40241864)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | C*環 / 記号力学系 / 位相的マルコフシフト / スメール空間 / 軌道同値 / Ruelle algebra / Cuntz-Krieger 環 |
研究実績の概要 |
平成30年度前半は、記号力学系を含む双曲型力学系の中のスメール空間と呼ばれる位相力学系から構成されるC*-環及びその上のゲージ作用と、元の力学系の軌道同型類や、位相同型類、flip 共役類、flow equivalence 類がどのような関係にあるかを研究した。特に、スール空間に対して、定義された漸近的軌道同型、漸近的位相共役の概念をRuelle が定義したC*-環とその上のゲージ作用の言葉で完全に言い換えることができることを証明した論文、Asymptotic continuous orbit equivalence of Smale spaces and Ruelle algebras、Keno Matsumoto が Canadian Journal of Mathematics に出版されることなった。また、他にも記号力学系である位相的マルコフシフトをスメール空間と考えて、その位相共役類とRuelle algebraとの関係を調べた論文 Topological conjugacy of topological Markov shifts and Ruelle algebras を投稿し、flow equivalence 類とRuelle algebraとの関係を調べた論文 Flow equivalence of topological Markov shifts and Ruelle algebras も数学専門誌に投稿することができた。これらの結果は、9月に岡山大学で行われた日本数学会、数理解析研究所での作用素環論研究集会や、3月に東京工業大学で行われた日本数学会でも発表した。また年度後半はスメール空間からできるC*環をマルコフ性をもたない一般の記号力学系にまで拡張することを考え、3月の大阪教育大学での作用素環論研究会において招待講演を行い発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度が、本研究計画最終年度であったが、10月に体調不良により10日間入院することになった。10月から2か月間ほど体調が元に戻らず、共同研究者のW.Krieger 教授(ドイツ、ハイデルベルグ大学)の招聘の計画も中止し、いくつかの力学系、エルゴート理論の研究集会への不参加も余儀なくされ、当初の研究計画が遅れた。年度前半は、概ね順調に研究成果を上げることができたが、10月以降は、上述のように、一時的に、研究が当初予定よりも遅れざるをえなくなった。そのため、最終年度の研究計画を1年間延長し、平成31年度も引き続き、記号力学系の分類とその軌道同型とC*環の研究を行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度後半に、lambda-graph bisystemsという概念を導入して一般の記号力学系に対してRuelle algebraを定義し、記号力学系の軌道同型等の研究をするアイデアに至った。この考えを3月に大阪教育大学で行われた作用素環論研究会において発表し、参加者といろいろな角度から研究討論できた。位相的マルコフシフトとは限らない一般の記号力学系対しては、このC*環の構造は全く解明されておらず、そのK-理論もどのように計算さるかはまだよくわからず研究すべき興味ある課題は多い。一般の記号力学系に対してどのように連続軌道同型類を定義して良いかもまだ確定していないので、このC*環を使い軌道同型の研究を行いたい。また、位相的マルコフシフトを一般化したスメール空間に対しても、その軌道同型類の計算可能な不変量による分類もまだできていない。今後はこの方向も視野に入れ研究を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年10月に、研究代表者が体調を崩し、2か月ほど体調不良であった。 10月、11月 12月の3か月間、W. Krieger 教授(ドイツ・ハイデルベルグ大学)の招聘中止、力学系、エルゴート理論、作用素環論の研究集会やセミナーに参加できなかったことにより、旅費に余剰が生じた。30年度は研究計画最終年度であったため、研究期間を1年間延長することとなった。31年度は昨年度後半に参加できなかった力学系、エルゴート理論、作用素環論の研究集会にできるだけ参加し、研究を推進したい。また可能であれば、Ergodic Theory and Dynamical Systems という力学系、エルゴート理論、作用素環論の研究雑誌を購入したいと考えている。
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