時間変数と空間変数の2次元偏微分方程式に対して、時間変数をq-差分化したq-差分微分方程式の初期値問題を扱い、昨年度得られた結果を広げることが出来た。具体的には、昨年度、典型的な定数係数線形q-差分微分方程式の局所正則初期値問題に現れる形式冪級数解に対する収束性の必要十分条件、発散する場合に発散級数解のk-総和可能であるための必要十分条件を初期値に対する大域的指数増大度(「局所正則な初期値に対するk-総和可能条件」と呼ぶ)によって特徴付けた。この結果を初期値が大域正則(整関数)の場合に、「局所正則な初期値に対するk-総和可能条件」の下で発散級数解がk-総和可能であることを示した。さらに、1方向におけるk-総和法の概念を、区間におけるk-総和法の概念(すなわち、区間の任意の方向にk-総和可能として定義)に広げることにより、「局所正則な初期値に対するk-総和可能条件」は発散級数解がk-総和可能である必要条件にもなることを示した。 この結果と先に得られた形式級数解の収束条件から、初期値がある位数γの指数増大条件を満たす整関数である仮定の下で、初期値がいくつかの方向ではγより小さい位数δの指数増大条件を満たしていれば、実は全平面で位数δの指数増大条件を満たす整関数である、という関数論的事実を示すことが出来た。 また、q-差分微分方程式に対して得られた結果を応用して、q→1で得られる偏微分方程式に対しても同様な結果を得ることが出来、2003年に得ていた結果の拡張を得ることが出来た。具体的には、ある典型的な定数係数線形偏微分方程式の大域正則初期値問題の発散級数解がk-総和可能であるための必要十分条件を与えている2003年の結果では、方程式に制限が課されていたが、その制限を緩めることが出来た。ただし、熱方程式は含めることが出来ておらず、2017年度の結果を広げることには繋がっていない。
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