研究実績の概要 |
2018年度の目標として,無限ルベーグ空間に作用する保存的かつエルゴード的な非可逆保測変換は,局所コンパクトカントール集合上の狭義エルゴード的な連続全射として,測度論的に同型表現されることを証明しようと試みた.その証明のもとになるアイデアとして,A.Rosenthal(Israel J. Math.,1988)と本研究代表者(J. Anal. Math.,2013)を念頭に置いた.前者は,非可逆エルゴード的確率保測変換はカントール集合上の狭義エルゴード的連続全射に測度論的に同型表現できることを示した.まずこの論文を精査することから研究を始めた.その証明の困難さは,可逆の場合と異なり,全空間を張る角谷-ロホリンタワーの存在を望めないことや,それに代わるテクニックとして,任意に小さい部分を除いた箇所に単一のタワー(いわゆるロホリンタワー)の存在は望めるが,なおも排反なコラムに分けられないこと,などにあると究明することができた.さらには,ロホリンタワー外での軌道の振る舞いを制御するために「一様性」という概念をロホリンタワーに持ち込んでいることも重要であった.これらを踏まえ,無限ルベーグ空間の保測変換の場合にも,同様な手法でロホリンタワーを構成しようと試みたが,全測度が無限大であることが根本的な障害として現れた.また,考えるべき「一様性」としてどのようなものが最適なのかも未解決である.今後は,上述の本研究代表者の成果と合わせて,上に挙げた目標を肯定的に解決したい.
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