研究実績の概要 |
(1) 等質開凸錐の最小行列実現:任意の等質開凸錐を実正定値対称行列のなす凸錐をスライスする形で実現するものの内で,行列のサイズが最小となるものを,向き付けグラフを援用し,グラフ理論の用語により.その最小のサイズを明示的に記述した,この研究成果は,非専門家にも等質開凸錐へのアプローチを容易にするものである.学術論文として執筆中である. (2) 等質開凸錐の基礎理論の整備:引き続き,この研究の完成を目指し,証明過程の細部の精査を行い,(1)の成果の論文に続き,論文を完成させる予定である.研究の概要としては,等質開凸錐の基礎理論におけるVinbergの論文 (1963) にあった論証のギャップを,従前の幾何学的手法(Koszul)や解析的手法 (Rossi-Vergne) とは異なり,Vinbergの論文の精神を引き継ぐ代数的な手法によって埋めるものである.この研究成果は,数学的な大道具を用いずに等質開凸錐の理論の基礎部分を補強するものである. (3) 古典解析におけるホブソンの公式の証明の現代化:この公式は1894年にHobsonにより発表されたものであるが,その証明は技術的で大変わかりにくい.研究代表者の野村はLie代数的な手法を取り入れて簡明な証明を与えることに成功した.学術論文として,Kyushu Journal of Mathematics, 72 (2018), 423--427 に掲載された.本研究はDunkl解析にも応用され,当初は予期していなかった方向へと発展している. (4) 著書「球面調和函数と群の表現」を出版した.成果(3)も取り入れた内容になっている.
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