研究実績の概要 |
本研究計画は,当初グラスマン多様体上の超幾何函数(一般超幾何函数)の満たす微分方程式系の大域的研究,特にモノドロミー表現やストークス現象の研究を進めることであった。一昨年度から,多変量解析の研究に重要な役割を果たす行列積分で定義される超幾何関数について研究をおこなっている. Grassmann多様体G(2,N)上の一般化された超幾何関数のうち,G(2,4)の場合に現れるものは,本質的にGauss, Kummer, Bessel, Hermite-Weber, Airy関数などの古典的超幾何関数である.その行列積分版を考えて行列積分を独立変数行列の固有値x1,x2,…,xn と積分変数行列の固有値の積分にGaussの場合も含めて書き直した.Gauss, Kummer, Besselの行列版の場合はそれらを特徴付けるholonomic系が知られており,その解空間の次元は2n である.これらのholonomic系はxi=xj に特異点を持つことが知られている. これらの特異点の共通部分x1=x2=…=xnに制限して得られる関数は,上記古典的超幾何関数の積分表示の被積分関数をweightとする準直交多項式に付随するmomentを成分とするHankel行列式であることが分かった.これはmonodromy保存変形によって得られるPainleve方程式という非線形方程式の特殊解を与える. 行列積分版超幾何関数の被積分関数に積分変数行列の固有多項式|z-X|を掛けて積分して得られる関数は,zの多項式となる.これは共形場理論に関連して現れる量子Painleve系の多項式解であることが,Gaussの行列版の場合も含めて分かった.Hermite-Weber,Airyの行列版の場合のholonomic系はまだ得られていない.
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