研究課題/領域番号 |
15K04905
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
大野 修一 日本工業大学, 工学部, 准教授 (20265367)
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研究分担者 |
泉池 敬司 新潟大学, 自然科学系, フェロー (80120963)
細川 卓也 茨城大学, 工学部, 准教授 (90553579)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 合成作用素 / 乗法作用素 / 荷重合成作用素 / Hardy空間 / Bergman空間 / Bloch空間 / Besov空間 |
研究実績の概要 |
我々の研究目的は,解析,調和関数空間上の作用素の関数解析学的性質を,定義域であるその関数空間に属する解析,調和関数の関数論的性質で特徴付けることである。 1. 研究分担者泉池敬司新潟大学フェローと「特性関数がシンボルであるToeplitz作用素と合成作用素の積のコンパクト性の特徴付け」の問題を引き続き考察した。この問題への解答が,この分野の重要な難問である「Hardy-Hilbert空間におけるコンパクトな荷重合成作用素の特徴付け」の手がかりを導くと信じられる。この問題が提出された元々の研究課題である「合成作用素のToeplitz性」のなかで,合成作用素の共役作用素と合成作用素の積について,残っていた一様位相,強,弱位相の考察を行い, 合成作用素と合成作用素の共役の積のToeplitz性を特徴付けた。また,荷重合成作用素のToeplitz性及び各位相での近似的Toeplitz性を特徴付けた。 2. 単位円の自己解析写像とそれが導く合成作用素の関係は函数解析学と関数論を結ぶ興味深い,重要な問題である。研究分担者の細川卓也准教授(茨城大学工学部)とBlochおよびlittle Bloch空間で, 2つの自己解析写像による個々の合成作用素のコンパクト性とそれら2つのシンボルの積のコンパクト性の関係を完全に特徴付け,コンパクトな合成作用素を導く自己解析写像の具体的な例を作成した。シンボルのコンパクト性の特徴付けは,ある意味「双曲型微分」となる幾何関数論的な興味ある結果となっている。またこれらの結果は,little Bloch空間と有界解析関数空間H∞の共通部分の空間に関係している。これらの空間は,1980年代に研究されたDouglas環の理論で出てくる興味深い空間の一例であり,さらなる進展が予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.研究分担者泉池敬司(新潟大学フェロー),泉池祐子と荷重合成作用素の位相構造を有界解析関数空間及び調和関数空間で研究を行ってきたが,作用素の値域を単位円周上の有界な関数空間L∞にしたときの結果「Topological properties of path connected components in spaces of weighted composition operators into L∞」が,Rocky Mountain Journal of Mathematicsに刊行された。2.合成作用素のToeplitz性問題については,合成作用素の共役作用素と合成作用素の積について,残っていた一様位相,強,弱位相の考察を行い,合成作用素と合成作用素の共役の積のToeplitz性を特徴付けた。それらの成果をsurveyとして2015年12月の「関数環研究会」で報告。その内容を「研究集会報告集」に投稿した。また,荷重合成作用素のToeplitz性及び各位相での近似的Toeplitz性を特徴付け,論文としてまとめた。3.研究分担者の細川卓也准教授(茨城大学工学部)とBlochおよびlittle Bloch空間で,2つの自己解析写像による個々の合成作用素のコンパクト性とそれら2つのシンボルの積のコンパクト性の関係を完全に特徴付け,コンパクトな合成作用素を導く自己解析写像の具体的な例を作成した。それらの結果を論文としてまとめ,投稿の準備を始めた。
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今後の研究の推進方策 |
1. Hardy-Hilbert空間上の荷重合成作用素のコンパクト性の特徴付けはこの分野の最大の難問であるが,その具体的な問題である「荷重関数が特性関数の場合」を,研究分担者の泉池フェローと考察したい。各々が日本工業大,新潟大学への出張を行い,共同研究を押し進める。 2. 研究分担者の細川准教授とは Hardy-Hilbert空間で, 単位円の自己解析写像とそれが導く合成作用素の関係を明らかにしたい。この課題について, 茨城大学工学部,日本工業大間で出張を行い,セミナーを実施し,討議を行う。位相構造問題は作用素論をはじめとした諸分野の問題としても興味深いため,研究協力者の瀬戸道生准教授(防衛大校),植木誠一郎(東海大),泉池耕平講師(山口大)と討議を行うこととなろう。各所属機関への出張を行う。 3 Little Bloch空間と有界解析関数空間H∞の共通部分上の荷重合成作用素についての位相構造を考えたい。Douglas環の理論に関連したH∞と連続関数空間との和空間で荷重合成作用素の有界性,コンパクト性も特徴付けたい。 予定の研究のために, 研究分担者,研究協力者とメールと結果の添付ファイルにより連絡を取りあい,休暇中の各所属機関への出張で共同研究を押し進める。そのための旅費をまず考えている。資料として, 解析関数空間及び作用素論関係図書及び学位論文等を購入し, 議論,問題作成に役立てる。また,研究の成果の発表,知識取得のために,学会(9月関西大学), 研究集会(関数環研究集会等)に参加する。 関連分野の知識の交流および獲得のための研究集会「宮代セミナー」を日本工業大において開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」は旅費の端数として生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
少額のため,次年度の旅費内に十分組み込まれるであろう。研究分担者,研究協力者との研究打ち合わせ,研究の成果の発表,知識取得のための学会,研究集会への参加のための旅費として考えている。
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