研究課題/領域番号 |
15K04906
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 渉 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター, 訪問教授 (40016142)
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研究分担者 |
小宮 英敏 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (90153676)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 関数解析学 / 凸解析学 / 不動点理論 / 最適化理論 / 極大単調作用素 / スプリット不動点問題 / バナッハ空間の幾何学 / 点列近似法 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究は、新しい不動点理論と凸解析学を用いた非線形関数解析学の構築と非線形問題を究明することを目的として行い、特にヒルベルト空間やバナッハ空間での不動点の存在や不動点の構造に関する研究、写像の族が半群とならないエルゴード定理の研究、及び凸解析や関数解析を用いての逆問題の研究とその解を求める近似法の研究を行った。ヒルベルト空間やバナッハ空間での不動点の存在や不動点の構造に関する研究では、不動点を一般化したアトラクティブポイントの研究を行い、ヒルベルト空間でアトラクティブポイントに関する2つの定理を得た。またバナッハ空間でもアトラクティブポイントの研究を行い、2つの写像の共通アトラクティブポイントに関する定理を証明した。写像の族が半群とならないエルゴード定理の研究では、一般化された2つのハイブリッド写像を用いて、それらの平均を定義し、平均弱収束定理を証明することに成功した。この定理はバイヨンの非線形平均弱収束定理を大幅に拡張する定理でもある。凸解析や関数解析を用いての逆問題の研究とその解を求める近似法の研究では、2つのバナッハ空間に対するスプリット共通零点問題、及びスプリット共通不動点問題の研究を行い、スプリット共通零点問題の研究では、極大単調作用素の3つのリゾルベントのうち、距離リゾルベントとジェネラライズドリゾルベントのスプリット共通零点問題の解決に成功した。バナッハ空間に対するスプリット共通不動点問題の研究では、距離リゾルベントを一般化する非線形写像やジェネラライズドリゾルベントを一般化する非線形写像に対するハイブリッド型の定理を証明することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画がそれ以上に進展した理由は、研究代表者のこれまでの準備や知識が十分であったことに加え、大量の文献収集やその整理、ならびにこの研究に興味を持っている国内外の研究者との数多くの研究打ち合わせや討論が功を奏したことがその理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究に引き続いて以下の方法で推進する。 (1)バナッハ空間に対するスプリット共通不動点問題のうち、マン型、ハルパーン型不動点近似法に関する定理を研究する。 (2)バナッハ空間に対するスプリット共通零点問題のうち、極大単調作用素のサニイジェネラライズドリゾルベントの問題が解けていないので、その定理を証明したい。 (3)ヒルベルト空間に対する必ずしも縮小写像でない写像の一意の不動点定理を証明し、それを数理経済学の均衡問題の研究に応用したい。 (4)ノルムが1の線形写像は非線形サニイジェネラライズド非拡大写像になるので、これまでに得られた非線形解析学の定理や手法を、ノルムが1の線形写像などの線形写像の研究に応用したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、海外の研究者の旅費、滞在費を計画していたが、研究者の都合により、日本に来ることが出来なかったので、それらの旅費、滞在費が使えなかった。 今年度は、沖縄で研究代表者(高橋渉)が主催する非線形解析学と最適化の国際研究集会が11月5日から9日にかけて行われる。その研究集会に海外の非線形解析学と最適化に関係する研究者が数多く参加する。それらの研究者のうち本研究と深い関わりを持つ研究者を今年度の予算を使って招待し、非線形解析学と最適化について、討論、情報交換を行う。そのためにその旅費や滞在費を使いたい。
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