研究実績の概要 |
正則特殊化可能系(regular-specializable)に関する佐藤超函数解の境界値問題の定式化,及び境界値型射(boundary morphism)の定義に関しては,(a)Monteiro Fernandes による定義(1992), (b)Monteiro Fernandes による再定義(1994),(c)Laurent-Monteiro Fernandes の共著による導来圏での定式化(1998), という3つの論文が知られている.これらで与えられた境界値型射については,論文(c)に於いて(b),(c)での型射の同値性が述べられているが,実は証明の議論に不充分な点があった.又,(a)での型射との同値性については,明示的に証明されている文献が見つからなかった.そこで今年度は,(a),(b),(c)で与えられた境界値型射が全て同値である事を証明した.実際,その証明には(c)で用いられた余接バンドル上の整型超局所函数(holomorphic microfunction)解に関する結果だけでは不充分で,接バンドル上の整型函数(holomorphic function)解の特殊化(specialization)に関する結果が必要となる事が判る.これに関しては,田原秀敏によるFuchs-Volevich系に対する結果を適用すれば必要な結果が得られる事が判った.副産物として,以前に私が定義した,正則特殊化可能系に対する分布(distribution),Gevrey超分布(ultradistribution)解の境界値の両立性も明確になった. 又,2019年度は,研究成果の発表として11月に京都大学数理解析研究所で行われたRIMS共同利用(公開型)で講演を行った.本来は2020年3月にも講演の予定があったが,新型コロナウィルスの影響で研究集会が中止となったのは残念であった.
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