研究課題/領域番号 |
15K04910
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
長 宗雄 神奈川大学, 理学部, 教授 (10091620)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Entropy / Hilbert space / Operator Theory / spectrum / isometry / Cの*乗-algebra / dynamical system / ∞-isometric |
研究実績の概要 |
「各種エントロピーを巡る可測力学系と位相力学系との作用素論的基礎研究」で n次複素行列上の正線形写像が単位元を単位元に移し標準トレースを保存するとき Double stochastic 行列が出る。この性質をもつ写像とDouble stochastic行列の研究が関連しているので、これによってエントロピーを定義する。そして、その値がゼロである写像の特徴付けを行った。 結果は研究集会17th Workshop:Noncommutative Probabilityで長田まりゑが参加し「Operational extreme points of completely positive maps」の題名で研究発表を行った。さらに Workshop on Harmonic Analysis in Nara 2017 では「Around strictly operator convex functions」の題名で講演を行った。「作用素論的基礎研究」においては、2016年度はクラコフでの国際研究会を含み4度の研究発表を行い、発表した論文は次の7編です。 1. Elementary properties of ∞-isometric operators on a Hilbert space. 2. On m-complex symmetric operators. 3. On m-complex symmetric operators II. 4. On ∞-complex symmetric operators. 5. Spectrum of class p-wA(s,t) operators. 6. The pertubation classes for closed operators. 7.On (m,C)-isometric operators.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Double stochastic 行列と各種エントロピーを巡る展開において、各要素はすべて非負である行列に対して、各行および各列の和が共に1であるものはDouble stochastic 行列と呼ばれる。n 次複素行列上の正線形写像Φが単位元を単位元に移し、標準トレースを保存するならば、その写像から必然的にDouble stochastic 行列 T(Φ)が浮上してくる。従って上記の性質をもつ写像Φに対する議論とDouble stochastic 行列T(Φ)に対する議論を平行に進めることができる。このことに注視してT(Φ)にエントロピーを定義することにより、その値がゼロであることによる写像Φの性質の特徴付けることができた。さらに作用素 T と S が ∞-isometricのとき、T と S のテンソル積も∞-isometric であり、 Nagy-Foias-Langer 分解を示した。T がm-complex symmetric であれば Tのn乗もm-complex symmetric であり、T が decomposable である必要十分条件は Tの*乗が性質 (δ) をもつことであることを示し、m-complex symmetric operator のスペクトルの性質を明らかにした。p-wA(s,t)作用素の研究を行い、スペクトルの孤立点に対応する Riesz idempotent は self-adjoint であり、その値域は像に等しいことを示した。また、∞-complex symmetric 作用素のスペクトルの性質を調べ、二つの∞-complex symmetric 作用素のテンソル積も∞-complex symmetric 作用素であることを示した。Semi-Fredholm 作用素とFredholm 作用素の性質を示した。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度においては Double stochastic 行列と各種エントロピーを巡る展開での議論を通して、完全正値写像の集合の中での*-同型写像が占める特別な役割に関する結果が生じてきた。その役割をエントロピーだけでの観点からではなく、凸集合の観点から掘り下げる事に依り、作用素論的凸結合と作用素論的端点の概念を導入することにより、単純 Cの*乗環の中心的な位置を占めるクンツ環と、その上で基本的な役割を果たす Cuntz's についての結果を2016年度に論文題名「Operational extreme points and Cuntz's canonical endomorphism」としてプレプリントに纏めた。その段階での議論を通して2017年度には、以前に論文 「Conjugate Pairs of Subfactors and Entropy for Automorphisms, International Journal of Mathematics, Vol. 22, No. 4 (2011) 577-592」で示した II1 型因子環の部分因子環の集合における相対エントロピーと内部自己同型写像に対するエントロピーとの関係を、一般の自己同型写像に対する結果へ拡張していく。作用素論的基礎研究については、これまでと同様に m-isometric 作用素と m-symmetric 作用素の性質の研究を進める。さらに skew symmetric 作用素と skew isometric 作用素の研究も進める。特にそのスペクトルの性質の解明に努める。さらに conjugation をバナッハ空間上の場合に拡張することも昨年度と共に今年度も課題の一つと考える。
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