研究課題/領域番号 |
15K04910
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
長 宗雄 神奈川大学, 理学部, 教授 (10091620)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | entropy / operator algebra / spectrum / Hilbert space / Banach space / operator / conjugation / numerical range |
研究実績の概要 |
2015年度から2019年度までの期間で研究を進めている「各種エントロピーを巡る展開および可測力学系と位相力学系との作用素論的基礎研究」について、当初の計画を2018年度もおおむね達成することができた。2018年7月15-21日にポーランドのベドレボ研究所で開催された Bedlewo 2018,18th Workshop「Noncommutative probability, Operator algebras, Random matrices and related topics with applications」に於いて,「Matrices over algebras and UCP maps」のタイトルで発表を行い,Andrzej Luczak や Marek Bozejko 等から論文依頼を受け早急に完成させると共に,さらに発展させた結果を導く事を目的とする。Double stochastic 行列と各種エントロピーを巡る展開において、各要素はすべて非負である行列に対して、各行および各列の和が共に1 であるものはDouble stochastic 行列と呼ばれる。n 次複素行列上の正線形写像Φが単位元を単位元に移し、標準トレースを保存するならば、その写像から必然的にDouble stochastic 行列 T(Φ)が浮上してくる。従って上記の性質をもつ写像Φに対する議論とDouble stochastic 行列T(Φ)に対する議論を平行に進めることができる。このことに注視してT(Φ)にエントロピーを定義することにより、その値がゼロであることによる写像Φの性質の特徴付けを行った。この結果は ソウル大学において開催された研究集会 KOTAC 2018において、7月 18日の午後 「Linear operators on a Banach space」の題名で研究発表を行った。さらに「作用素論的基礎研究」においては昨年度に引き続き、ヒルベルト空間上の有界線形作用素に対してcomplex-symmetric operator の一般化と、スペクトルの特徴について研究を進めていて、幾つかの結果を得たので、論文として纏める作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費による研究によって非常に多くの研究成果を得ることができた。それらの成果を韓国で開催された研究集会で「Linear operators on a Banach space」の題名で発表を行った。さらに、拓殖大学文京キャンパスで開催された第57回実関数論・関数解析学合同シンポジウムにおいては「線形作用素の conjugation に係る話題」の題名で講演行い、京都大学数理解析研究所で10月24日~26日間で開催された研究集会「作用素平均を利用した作用素の構造解析の研究と関連する話題」においては3つの研究発表を行った。最後に、2019年3月16日にフランス・リール第一大学において「Topics of linear operators」の題名で講演を行った。特にリール第一大学における研究発表では多くの研究者が集まり、好評であった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究では ell^1(Σ) のイデヤルの構造。C*(Σ)では力学系がtopologically free のときにその部分環C(X) がそのイデヤルの構造を反映するのは以前から知られていたが、一般の系でell^1(Σ) まで含めてその可換子環、C(X)',C(X)'_1 がそれぞれの閉イデヤルの構造を反映していることが判明し、その結果それぞれの単純性と力学系の極小性の同値性が判明した。さらにこの結果は ell^1(Σ) においてそのすべての閉イデヤルが自己共役であることと力学系が自由(周期点が無い)であることとの同値性の証明にも使われる。ここでC(X)'_1 とell^1(Σ) の構造とは(Hermite 性の問題などを通じて)さらに深い関係があるので引き続きこの面を研究する。ちなみに ell^1(Σ) がHermite Banach algebra なのかどうかは部分的な解決以外一般にはまだ解決されていない。作用素が不変部分空間を持つか否かについては、V. Lomonosov により新たな展開となったが、今も作用素論の重要な問題である。この問題を hyponormal 作用素に拡張するために色々な研究がなされているので、さらに一般的な作用素に拡張することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者である B. Nacevska Nastvska 教授が来日し、研究を進める予定でありましたが、病気のため、来日できませんでした。そのため宿泊費用を今年度に持ち越し、今年度、横浜での宿泊費用に充てる予定です。
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