研究実績の概要 |
今年度は昨年度に引き続き,一般化q-パンルヴェVI系の代数構造について研究を行い,次の結果を得た。以下の結果は全て大久保(青山学院大)との共同研究によるものである。 (a) Inoue-Lam-Pylyavskyyによる先行研究(Publ. RIMS, to appear)に基づいて,ある4n+4個の頂点を持つトーラス上の箙を不変に保つような変異と置換の合成を系統的に構成した。このようにして得られた合成はクラスター係数についての双有理変換となるが,それらのなす群がA_{2n+1}+A_1+A_1型拡大アフィン・ワイル群と同型になることが本研究で明らかにされた。更に,この群の平行移動変換を具体的に書き下すことで,既知の3種類(坂井のq-ガルニエ系,津田によるq-UC階層の相似簡約,研究代表者によるq-DS階層の相似簡約)を含む4種類の一般化q-パンルヴェVI系を導出した。上記の3種類の方程式は,線形q-差分方程式系の差分両立条件として提唱されていたが,今回の結果によりカッツ・ムーディー・ワイル群の平行移動としても導出されたことになる。 (b) (a)で得られた結果を拡張して,A_{mn-1}+A_{m-1}+A_{m-1}型拡大アフィン・ワイル群の双有理表現を与えた。この結果はKajiwara-Noumi-Yamada(Lett. Math. Phys 2002)によるA_{n-1}+A_{m-1}型の拡張となっている。mが3以上の場合に平行移動変換を明示的に書き下すことが出来れば,新たなq-差分方程式系のクラスが得られるであろう。 (c) q-DS階層の相似簡約はハイネのq-超幾何関数を特殊解として持つことが研究代表者(Comtemp. Math. 2015)によって既に明らかにされているが,この超幾何関数解の条件を(a)で得られた結果を用いてクラスター係数における条件として書き直すことが出来た。この結果を(b)の結果と合うように拡張出来れば,様々なq-超幾何関数及びリジッド系のq-類似が箙における変異から系統的に得られるであろう。
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