研究実績の概要 |
ゲージ理論の厳密解、 ミラー対称性、グロモフ-ウィッテン不変量などの数理物理の様々な局面において新たな研究対象となっているランダム平面分割に焦点を当てて、量子トーラス対称性や離散対称性など確率モデルの持つ対称性に着目することにより、 関連する可積分構造の精密な理解に迫り、数理物理への可積分系の応用を追及することが、この研究の目的である。 本年度は、1)位相的頂点を再現する非自明な境界条件を満たすランダム平面分割(歪Schur過程)にも有効な量子トーラスのシフト対称性の拡張を試みた。ランダム平面分割と可積分階層の関係で基本的であった、量子トーラスのシフト対称性の満足できる一般化を与えた。位相的頂点の巡回対称性の証明など一定の成果を挙げた。位相的頂点にはまだKP階層や戸田階層で扱えない部分があり、一般化されたシフト対称性の精査で、その可積分構造を探る重要な手がかりが得られると思われる。2)Gromov-Witten理論の立場からの位相的頂点の究明において、Deligne-Mumfordモジュライ空間上のHodge類によるWitten-Kontsevich型のタウ関数の変形と捉えて、『位相的頂点 = Three-partition Hodge integral (3つの整数分割でラベルされたHodge積分の母関数)』という数学予想が、J. Li, C.C. Liu, K. Liu, J. Zhouによって立てられた(LLLZ予想、2009)。Hodge積分の表現論的表示をランダム平面分割の視点で定式化し、量子トーラスの一般化シフト対称性を用いて、非自明な境界条件を満たすランダム平面分割の分配関数との関係を考察した。特に、LLLZ予想の証明の道筋が得た。以上、1)と2)の結果について、現在、論文に纏めている。
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