研究課題/領域番号 |
15K04913
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 悟 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90178971)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リー理論 / 複素解析幾何 / CR幾何 / 無限小CR自己同型 / チューブ領域 / ラインハルト領域 / 正則自己同型 / 正則同値問題 |
研究実績の概要 |
本研究では、リー理論を用いた複素解析幾何の研究を中心に、研究代表者および連携研究者の専門分野において主として、つぎのような研究成果を得た。 1.これまで研究代表者が行って来た研究で得られた、チューブ領域上の完備多項式ベクトル場に関する延長定理を利用して、可解な自己同型群をもつある種のチューブ領域に対して、その無限小正則自己同型環の構造を調べた。具体的には、D を複素 n 次元数空間内の多項式無限小自己同型をもつチューブ領域とし、その底は直線を含まない凸領域であるとする。そして D の正則自己同型群 G は可解である仮定する。このとき G のリー環に属する2次の多項式ベクトル場に対して、実線形座標変換を利用し、その標準形を与えた。 2.上記1の結果を基にして、G のリー環の巾零根基に属する多項式ベクトル場の次数が必ず1以下であることを示した。このことから、D が可解な自己同型群 G をもつときには、G のリー環に属する任意の多項式ベクトル場は次数が2以下であるということが分かった。 3.上記1の結果を利用して、D が可解な自己同型群 G をもつとき、G のリー環の一般的構造を調べた。そしてG のリー環の直和分解における、本質的な意味で次数が2であるような多項式ベクトル場のなす部分空間について、その標準的な基底を与えた。 4.次元の異なる一般複素擬楕円体の間の固有正則写像を分類した。写像の微分のある種の非退化性と、次元の差についての仮定を置くことにより、問題となっている写像は、定義域と値域の自己同型群の差を省いて線形埋め込みになっていることが分かった。これはHuang等による、球に対するギャップ定理の弱擬凸版とみなすことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のコアとなる内容について大きな進展をみている。また具体的な成果がまだ得られていない問題についても、その研究を通じて新たな結果、問題の知見を得ることが出来ており、研究全体としておおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
チューブ領域に関する正則同値問題の研究を、研究実績の概要に述べた成果を踏まえて推し進め、正則同値問題の完全解決を目指す。そして関連した諸問題の系統的な研究も行い、それらを通じてチューブ領域の複素幾何学的理論の構築を試みる。またリー理論を用いた CR 幾何の研究については、多項式無限小自己同型をもつチューブ領域の研究と関連して、チューブ超曲面の多項式無限小 CR 自己同型を調べる。そしてその研究をチューブ超曲面に関する CR 同値問題へ応用する。さらに本研究で得られた、まだ未発表の結果を、雑誌論文、学会発表を通じて順次発表してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入が当初の予定より安価に行うことが出来たことから次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
連携研究者等と研究打合せをするための旅費に用いる。
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