研究課題/領域番号 |
15K04916
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
種村 秀紀 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40217162)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 確率微分方程式 / 行列式過程 / 相互作用系 / 強マルコフ性 / 無限粒子系 / 末尾事象 / ディリクレ形式 / ブラウン運動 |
研究実績の概要 |
相互作用をもつ無限個のブラウン運動の系(ブラウン干渉系)を表す確率微分方程式の解の存在と一意性について研究を行った。そして、粒子の配置からなる状態空間を適当に決めることができ、その状態空間から出発した強解が存在し、その解が末尾を変えないという条件のもとで、一意であることを証明した。この末尾を変えないという条件は、無限次元確率微分方程式の境界条件と見なすことができる。したがって、得られた結果は、無限次元確率微分方程式の一つの境界値問題に対する、解の存在と一意性を証明したと解釈することができる。そして、末尾の変化を規定する境界条件のもとで、解の振る舞いをどうなるかという、無限次元確率微分方程式の解と境界値との関係を調べるという新しい問題も提起したことにもなる。この結果は、国際学会 (38th Conference on Stochastic Processes and Their Applications) で発表しており、纏めた論文は、雑誌投稿中である。 拡張された行列値過程の強マルコフ性を示した。この結果により、半群、生成作用素を用いた解析的アプローチができるようになり、行列値過程の確率解析が大きく発展した。その一つとして、無限次元確率微分方程式との対応が明らかになり、伊藤の公式などの確率解析の手法を用いて、たとえば、無限個の粒子のなかの有限個の粒子に着目したときに、これらの道の正則性、ブラウン運動との絶対連続性などを証明することができた。(Stoch. Proc. Appl.Vol 126 (2016)に掲載)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無限次元確率微分方程式の存在と一意性については、これまでにも研究されていたが、係数の条件が十分強く、逐次近似が技術的にうまい具合に行く場合が主な場合であった。当該年度に得られた結果は、末尾の不変性に着目し、従来よりも一般的な場合の一意性を議論している。確率過程の時間発展による末尾の変化、または不変性に関する研究は、これまで研究されていなかったが、解の一意性との関係を明らかにしたことにより、重要な対象であることを明らかにした。 一意性の副産物の一つとして、相異なる手法で構成された無限次元確率過程が一致することを示すことができ、それぞれの構成法に関連した手法を合わせてもちいることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
干渉ブラウン運動系を表す無限次元確率微分方程式の一意性を示した、末尾事象の不変性に着目した技法は、かなり一般的な無限次元確率過程に関して有効であり、例えば、マルチンゲールの一意性、ディリクレ形式の拡張の一意性などに適用可能である。また、ブラウン運動、拡散過程などの道が連続である確率過程だけでなく、飛躍型の確率過程の解析にも有効な手段となる。今後の研究推進の一つの方向としては、これらの一般化を進めていくことである。 確率過程の時間発展による末尾の変化、または不変性がどの様な条件のもとで起こるかを示すことが、一つの大きな研究課題になった。このことが、配置空間(状態空間)の位相的性質と大きく関連することが予想される。無限次元空間の位相的性質を調べ、確率過程の振る舞いとの関係を探しだすことが、研究の発展につながることが予想される。 また、簡単な例を通して、末尾が異なる振る舞いをすることにより、解の一意性が成り立たない例も考えられている。具体的な例を検討しながら、一般的に成り立つ性質を抽出することも、一つの研究の方向であると思われる。
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