研究実績の概要 |
本研究期間中、無限次元確率微分方程式及びその関連の研究においていくつかの成果が得られた。長田博文氏(九州大学)との共同研究では、係数が滑らかな拡散型無限粒子系に対して一般的な枠組みで、系を表す無限次元確率微分方程式の解の存在と一意性について研究が進んでいる。この結果を適用することにより、一般の短距離相互作用系、多項式相互作用系はもちろん、ランダム行列理論で扱われている対数相互作用系に対する無限次元確率微分方程式の解の存在と一意性を示すことができる。研究期間中に従来の証明の厳密化, そして応用への一般化を行った。確率微分方程式の解は、弱解、強解などがあり、それらの相違は一意性をはじめ様々な設定のもとで重要な役割を果たす。無限次元確率微分方程式に対する弱解・強解の厳密な定義を確定し、その定義に基づき一意性をより明確化し、可測性に関する曖昧さを取り除くことができた。証明の基盤となる理論は頑強であり、広いクラスの無限次元確率微分方程式に対して一般化することが可能である。研究期間中にそのいくつかの重要な例への一般化も行った。各粒子が飛躍して移動する場合に対しては、江崎翔太氏(福岡大学)との共同研究により、長距離相互作用系を表す無限次元確率微分方程式の解の存在と一意性を示した。拡散過程に対する結果を合わせることにより、一般の強マルコフ過程に拡張できたことになる。また、ドリフト項に局所時間が付け加えられたスコロホッド型確率微分方程式に対しての一般化を行い、無限個の剛体球の系にも応用できることを示した。確率微分方程式の一意性の応用として、ディリクレ形式の一意性導出を、長田氏、河本陽介氏(福岡歯科大)との共同研究により得ている。ディリクレ形式の一意性は、ポテンシャル論の観点からも重要なものである。以上の成果は、研究集会で発表し、論文は、アーカイブに投稿されている。
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