研究課題/領域番号 |
15K04918
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 仁 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 助教 (70422392)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | n重線形埋蔵定理 / 加重付ノルム不等式 / 多重線形正作用素 / 多重Wolffポテンシャル |
研究実績の概要 |
Wolffポテンシャルは,非線形ポテンシャルであり,分数積分作用素(Rieszポテンシャル)および測度に対して定義される「エネルギー」という基本量を,より広い汎用性を持って記述できることから,現在偏微分方程式論等で基本的に用いられています.Verbitsky等は,このWolffポテンシャルを用いることで,分数積分作用素を離散化した正作用素に対する加重の理論を展開しました.私は,このWolffポテンシャルを用いることにより,下半3角形領域における正作用素に対する加重付きノルム不等式が成立するための必要十分条件を与えることに成功しました. 本年度は,多重線形正作用素に対する加重付ノルム不等式の特徴づけの研究を進めました.この研究は,単純な形を持つ一つの埋蔵定理を示すことに帰着されます.その単純な埋蔵定理をWolffポテンシャルの多重化を考察することにより与えました.この結果はこの方向の集大成に位置づけられるべき研究です.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実解析的手法による調和解析の分野において,多重線形作用素の研究は現在世界的な一つの潮流となっています. 1999年,我々の分野を現在もなお牽引し続けているNazarov, Treil, Volbergは,「双線形埋蔵定理」(bilinear embedding theorem)とよばれる単純な形を持つ加重付双線形ノルム不等式の成立を特徴づける一つの定理を与えました.彼らは制御理論にその源流を持つBellman関数の手法を用い,1次元かつHilbert空間の場合を取り扱いました.2009年,Lacey, Sawyer, Uriarte-Tueroは,この結果をd次元かつ上双対領域とよばれる部分へ拡張しました.彼らは2進立方体を用いたcorona分解の手法によっています.2012年,Hytoneは,この上双対領域の結果に対する初等的な別証明をparallel corona分解という新たな手法により与えました.2014年,私はParallel corona分解とWolffポテンシャルを用いることで,さらに下双対領域にこれらの結果を拡張し,完全なものとしました. 多重線形化の流れを受け,私は「3重線形埋蔵定理」(trilinear embedding theorem)の研究に着手しました.当初,比較的容易に上双対領域において定理の成立を確認することができました.しかし,下双対領域での特徴づけにはWolffポテンシャルの多重化を考察する必要があり,未知のまま残されました. Wolffポテンシャルは複雑な形を持ち,美しいとは言いにくいものです.しかし,圧倒的に強力であって,未知であった下双対領域での成立はこのWolffポテンシャルを反復して用いることから特徴づけられ,さらに,一般のn重線形埋蔵定理も同様の反復法から示すことができました.
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今後の研究の推進方策 |
Morrey空間は,関数の局所的なregularityをLebesgue空間よりも定量的に精密に記述できる関数空間であり,調和解析のみならず偏微分方程式論においても広く用いられている重要な関数空間です. Adams, Xiaoは,近年,このMorreyノルムの新たな一つの定式化を与えました.それは,Muckenhouptの加重で,そのHausdorff contentとよばれる量が1以下である加重の族を導入し,加重付Lpノルムの上限をその族について取ることにより与えられるものです. この新たな視点は,Muckenhouptの加重の理論をそのまま適用することで,Morrey空間上の古典的作用素の有界性が直接系として従ってしまうのみならず,既存のMorreyノルムによっては取り出すことのできなかった関数の局所的な増大度・減少度を加重を通して支配することができます.実際,私はこの新たな視点に立つことにより,べき型の動径的加重に対してHardy-Littlewood最大関数の加重付きMorreyノルム不等式が成立するための必要十分条件を与えその完全な特徴付けに成功しました. 28年度は,この手法に依拠して,さらに,分数積分作用素,分数最大作用素,特異積分作用素等に対する加重付ノルム不等式の研究を展開し,特にべき型の動径的加重について,不等式成立のための必要十分条件を明らかにしたいと思います.最大作用素についてはすでに確認できており,これらの作用素は最大作用素によってある意味において支配されることから,この研究は十分に可能であろうと確信します.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外での研究発表の旅費が,先方からの支出となり,繰り越しが生じました.これは次年度以降の旅費等に支出いたします.
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた海外での研究発表の旅費が,先方からの支出となり,繰り越しが生じました.これは次年度以降の旅費等に支出いたします.
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