研究課題
今年度も主にラフパス理論に関する研究を進めた。まずハースト指数が1/2より大きい場合に、非整数ブラウン運動と通常のブラウン運動で駆動される確率微分方程式(SDE)の緩慢系(slow-fast system)に関する平均化原理を示す論文を二篇書いた。片方は有限次元SDEだが、もう片方は確率偏微分方程式、すなわち無限次元の場合である。これらは西北工業大学のYong XU氏と九州大学のポスドクであったBin PEI氏との共同研究である。ハースト指数が1/2より大きい場合なので、ラフパス理論は使っていない。さてハースト指数が1/2より小さい場合にはラフパス理論が必要になる。筆者は上記の二氏とともに、ハースト指数が1/3と1/2の間にある場合に、ラフパス理論を用いて、緩慢系(slow-fast system)に関する平均化原理を示すことに成功した。緩慢系に対する平均化原理の歴史は長いが、ラフパス理論の枠組みにおいて示されたのはおそらく初めてである。その意味で、これは満足のいく結果だと思う。緩慢系に対する平均化原理は非常に多く論文が生産される話題なので、ラフパスという大きな理論と合体した今、将来がとても楽しみである。最後にラフパスの意味でのSDEをガウス・ラフパスで駆動した場合の解に対するマリアバン解析も引き続き研究した。具体的には解の法則が密度関数を持つ場合に、自然な十分条件の下で密度関数が真に正になることをラフパス理論とマリアバン解析を組み合わせて証明した。これは九州大学のポスドクであったBin PEI氏との共同研究である。
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