研究課題
複素力学系から生じるフラクタル集合に対し特定の可算点配置をフラクタル構造と呼ぶが、フラクタル構造のタイヒミュラー空間の定式化が本研究課題の最初の目標であった。まずリーマン球面上のフラクタル構造に対する研究成果は、国際集会講演論文集として出版された国際専門誌特別号の査読付論文として公刊できた。さらに一般のリーマン面上の場合にも定式化が成功し、その成果は連携研究者藤川氏との査読付共著論文としてアメリカ数学会の国際的専門誌から公刊できた。次に、重要な複素力学系に付随するフラクタル集合に対するフラクタル構造のタイヒミュラー空間に幾何学的大域座標を導入するという目標については、前者の論文でメビウス半群による反復合成力学系に対する幾何学的大域座標が導入できることを公表したが、後者の論文ではさらに、有限生成クライン群の擬等角変形空間に対して同様の大域座標を構成でき、さらに標準的な幾何学的有界性を仮定すれば、そのような大域座標を用いてフラクタル構造のタイヒミュラー空間に複素構造が導入できるという研究成果を公表できた。特筆すべきは、これらの大域座標から得られるフラクタル構造のタイヒミュラー空間に対する自然な表現空間を用いれば、その安定領域の決定のみならず重要な有限次元部分多様体に対するコンパクト化も解明できることである。さらにフラクタル構造のタイヒミュラー空間が無限次元となる場合についても、無限生成のショットキー群やケーベ群の場合に幾何学的大域座標を導入することに成功し、その成果は査読付論文として国際的専門誌に受理され現在 online-firstで公表されている。以上のように、本課題研究は本年度も満足できる数多くの成果を得て成功裏に終了できた。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Computational Methods and Function Theory
巻: 18 ページ: (Online-First)
10.1007/s40315-018-0235-5
Conformal Geometry and Dynamics
巻: 21 ページ: 64-77
10.1090/ecgd/301
Filomat
巻: 31 ページ: 45-51
10.2298/FIL1701045T