研究課題/領域番号 |
15K04930
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柴 雅和 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (70025469)
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研究分担者 |
濱野 佐知子 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (10469588)
山口 博史 滋賀大学, 教育学部, 名誉教授 (20025406)
増本 誠 山口大学, 理工学研究科, 教授 (50173761)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 開リーマン面の接続 / 双曲的スパン / 擬凸状領域 / 劣調和函数 / リーマン面の等角的埋め込み |
研究実績の概要 |
今年度は,この研究課題の目的として設定していた中心的問題の1つを解決し,論文の形にまとめ上げることができた.しかもさらに幸運なことに,提出した論文(代表者および分担者の山口・濱野の共著)はすでに受理された(出版時期は未定).この問題は,種数1の(有限な)開リーマン面の族が多変数複素関数論的に見てある自然な族(擬凸状領域)であるとき,開リーマン面の双曲的スパンが劣調和関数であること,また双曲的スパンが特に調和関数であるのは本質的に族が直積で書けるときであること,などを主張するものであった.この問題については分担者である山口の貢献が大きい.リーマン面論と多変数複素関数論との深い繋がりを示すこの問題は今後もさまざまな形で拡張発展することが期待される. 他方で,代表者は,上に述べた問題の次の段階への重要な足掛かりとして重要であるだけではなく,リーマン面の接続を研究する立場からも非常に基本的な問題の1つを解決することができた.すなわち種数が2以上の場合であってもその接続が定める周期行列の対角要素の各々はある円板を描く(埋め尽くす)という長年の予想を肯定的に解決した.これは種数1の基本的な結果が拡張したもので,これにより多変数複素関数論的立場からの考察が可能になると期待される.なお,この結果は未だ論文原稿の形とはなっていないが,今秋の日本数学会において発表を計画している. また,分担者の濱野は,リーマン面のSchifferのスパンおよび調和スパンが誘導する計量の多変数的性質を論文にまとめた(受理済).また,流体力学的微分の変分公式とその応用について考察を行った.分担者の増本は,与えられたリーマン面を等角的に埋め込ませるリーマン面の集合を, 射影構造の観点から考察し,とくに,種数有限な開リーマン面を等角的に埋め込ませる同種数の閉リーマン面の空間の構造の解明に応用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
少なくとも目標第1段階である「種数が1の場合」は期待された形で完全に解決された. 詳しくは上記の「今年度の実績報告」mp第1段落に述べたとおりである.この新しい結果を含む論文はすでに受理されて掲載が決定されてはいるが,出版が今年度になるかどうかはまだわからないので,今回の報告においては学術論文移管する実績欄に記載しないこととした.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題全体としては種数が2以上の場合に何らかの新しい函数を見出すことであるが,今後の具体的計画としては,種数1の開リーマン面について得られている双曲的スパンという自然な概念が,種数2以上の開リーマン面についてはどのような形で拡張されるか,あるいはまた接続の周期行列において,対角要素だけではなくほかの要素については どのような性質を示し得るか,など興味深い問題を考察することが挙げられる. これらはともに大きな流れの一例であるが,この研究課題(の一部)を含むものでもある.それゆえ,これらの問題の解決を2016年度の目標としたい.とくに,種数2以上の開リーマン面の接続の様相をもっと深く細かく知る必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は予想以上に効率よく研究の初期段階が進展したため,旅費などの経費を予算よりもかなり少なく済ませることができた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究課題そのものは今年度の成果を含んださらに広範囲の問題を考えているので,次年度に繰越額を有効に使う計画である.
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