・equi-regularなサブリーマン多様体上の水平部分接続に対応する直交枠束上に基本ベクトル場の構成を行い,そのベクトル場から定まる確率微分方程式の解をサブリーマン多様体に射影することにより,サブリーマン構造に対応するサブラプラシアンを生成作用素とする拡散過程をMalliavin解析の意味で滑らかかつ非退化なWiener汎関数として構成することに成功した.この手法は,これまでリーマン多様体上でブラウン運動を構成する際に用いられていたElles-Elworthy-Malliavinの手法の一般化となっている.このようにして構成したWiener汎関数にWatanabeの超Wiener汎関数理論を適用することにより,サブラプラシアンに対応する熱核の一般化された期待値表現を得た.さらに,この表現から熱核の対角線短時間漸近挙動を具体的に与えることが出来た(九州大学稲浜譲氏との共同研究,投稿中). ・equi-regularでないサブリーマン多様体への上記研究の拡張として,Grushin作用素に付随する熱核について具体的な計算を実行した.Grushin作用素に対応する熱核の確率表現は調和振動子の熱核の積分として得られ,調和振動子の熱核の具体形を利用することでGrushin作用素に対しる熱核の積分表示を得た.さらにラプラス法を適用することで,熱核の対角線短時間漸近挙動の変化の様子を具体的に記述することに成功した.この手法を次数が一般化されたGrushin作用素への拡張することについて,研究を継続している.
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