研究課題/領域番号 |
15K04932
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
神本 丈 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (90301374)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニュートン多面体 / ベルグマン核 / 振動積分 / 局所ゼータ関数 / 特異点解消定理 / 代数曲線 |
研究実績の概要 |
本年度は引き続き、多変数複素解析学や調和解析学における重要な問題を「ニュートン多面体」を用いた特異点解消を用いて多くの成果を得ることができた。以下、具体的な成果について説明を行う。 多変数複素解析学において、領域の境界(実超曲面)の局所的な不変量に関する研究は歴史的にも非常に重要である。現在までの研究で特に重要だと考えられるのは、ディーバー・ノイマン問題の観点から、D'Angeloの型とCatlin多重型と呼ばれるものである。これらは、応用上非常に重要であるが、具体的に領域が与えられたときに、それらを定量的に決定するという問題は現在までのところまだ研究が不十分である。申請者は、D'Angeloの型について、「ニュートン多面体」の幾何学的な情報から非常に多くの情報が得られることを示した。これは、この研究において、新しいアプローチを示すものでもあり、今後さらに深く研究がなされるであろう。また、ベルグマン核の境界挙動に関する不変量も、一つの重要な問題である。申請者は、この境界挙動が非常に複雑な状況にあることを、いくつかの具体的な領域を用いて示し、何が重要な情報であるかをある程度示すことができた。この研究は、現在以下に述べる振動積分の研究と並行して行われるものである。 調和解析学における重要な問題として、振動積分の挙動に関するものがあるが、これらについても、非常に興味深い結果を得ることに成功した。相関数のニュートン多面体の情報から、直接得られる場合について深く調べてきたが、今年度は直接は得られない場合に関して深く考察を行った。これらは、実解析性という仮定を外して、単に可微分可能性だけを仮定した場合に関しての研究である。 さらに、上の研究と深く関連して「局所ゼータ関数」の特異点に関する研究に関して著しい成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は、実際には「D'Angeloの型」に関する研究と「局所ゼータ関数の特異性」に関する研究に関して具体的な成果が多く得られた。これらは、十分満足するものであるが、申請者のおおきな目標は、ベルグマン核や振動積分の挙動に関するものがより重要であり、それらに関する深い理解を得るためには、もう少し時間を要する。
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今後の研究の推進方策 |
多変数関数論や調和解析学において重要な問題で、まだ十分な成果が得られていないものは非常に多い。その中で、特異点論的なアプローチにより大きく前進するものが多くあることを認識している。今後、今までに研究対象であった、ベルグマン核の境界挙動、実超曲面における不変量、振動積分の漸近挙動、局所ゼータ関数の解析接続の問題を発展させることを引き続き行いながら、より広い視野から多くの問題に挑戦してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究打合わせ及び研究成果の発表を行う予定であった出張が、新型コロナウィルスの感染の問題から実行ができなくなった。
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