研究課題/領域番号 |
15K04934
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西尾 昌治 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (90228156)
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研究分担者 |
下村 勝孝 茨城大学, 理学部, 教授 (00201559)
竹内 敦司 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30336755)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポテンシャル論 / 熱方程式 / ラプラス方程式 / 多重放物型方程式 / 多重調和関数 / ブロッホ空間 / 調和双対 / ベルグマン核 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究の初年度であるので、研究計画に沿ってこれまで知られている知見を整理することから始めた。本研究では、大まかに次の3つの研究テーマに沿って研究を進める計画である。1つ目は「熱方程式のマルチン境界」2つ目は「多重熱方程式に関する研究」そして3つ目は「放物型ベルグマン空間」である。 第1の熱方程式のマルチン境界に関しては、基礎となる熱方程式について、その方程式を不変にする変換に関する研究を分担者の下村勝孝が中心になり進めている。本年度は不定計量に対する熱方程式についての課題を整理した。その成果は2016年 1月末から2月にかけて開催された研究集会で発表された。 次に第2の多重熱方程式については、ラプラシアンを分数ベキにする一般化を試みている。これにより半空間に限られるものの多重調和関数との関連が明らかになりつつある。学会などで成果を発表して、問題点の整理を進めているところである。本年度における成果は、2015年9月に京都産業大学で開催された日本数学会秋季総合分科会、名城大学で開催されたポテンシャル論研究集会、および10月に京都大学で開催された RIMS 研究集会で口頭発表され、その基本的な部分は日本語の論文にまとめ数理解析研究所講究録から2016年1学に出版された。 最後に、放物型ベルグマン空間については、ブロッホ関数の調和双対について、研究協力者や連携研究者と共に研究を進めているところである。これまでに得られた成果は、2016年3月に筑波大学で開催された日本数学会年会にて口頭発表するとともに、現在論文投稿のためプレプリントの最終確認作業を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の方法に記載したように得られた研究成果はできるだけ速やかに学会などで発表することにより、その意義や方向性を確認している。当該年度は、研究発表欄に記載の通り本研究の準備段階で得られた結果や萌芽的結果を含め計9件の口頭発表を行った。このように、本研究申請時から計画されていた方向に向けて順調に研究が開始され進展していることがわかる。 テーマごとの進捗状況は下記の通りである。 まず、熱方程式のマルチン境界に関しては、検討課題の整理を進めている段階である。その過程であっても得られた結果はただちに論文や口頭発表で客観的な評価を得られるよう注意して研究を進めている。ベルグマン空間に関連する関数空間について当初の計画通り研究が進んでおり、調和双対について放物型方程式に関連した概念を提唱することができた。学会でその成果を発表し、現在論文として投稿準備を進めているところである。また、多重熱方程式を関数空間的に捉える研究が今後の課題として非常に興味深いものになってきている。この方面に関しては、2016年6月にルーマニアで開催される国際集会で発表する計画をすすめている。また、論文発表に向けて、研究分担者と連絡を取り合っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
研究をどの方向に進めるべきかを見定めることは、成果の大きさや意義に直結するため非常に重要なことであると考えられる。そこで、セミナーを積極的に企画し最新の情報を得ることが求められる。 また、現時点での方向性として、それぞれのテーマに対して次のように考えている。 1.熱方程式のマルチン境界:マルチン境界には関連する概念がいくつか存在することが知られている。その1つにローブ境界と呼ばれるものがあるが、これが放物型ハーディ空間の再生核に関連してあらわれるセゲー核とのつながりが示唆されつつある。次年度ではこの辺りを掘り下げることが興味深いと考えている。 2.多重熱方程式では方程式にあらわれるラプラシアンを分数ベキのものや相対論的ラプラシアンにする一般化を試みることが重要な課題として浮かび上がってきている。早速、検討に入り基礎的結果を次年度6月にルーマニアで開催される国際研究集会で発表したいと考えている。これにより、さらに方向性を明確にして研究を進めていく予定である。 3.放物型ベルグマン空間:ベルグマン空間のある意味での極限ともいえるブロッホ空間についてその重みの持つ意味が重要になってきていると感じている。次年度においては、この点を明確にすることを目標にしていきたい。その結果、逆方向の極限としても考えられるハーディ空間への応用が期待されるのではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集のために予定していた図書の導入が一部遅れたため、その分の物品費が次年度使用額として計上されている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の次年度使用額については、図書が納入され次第物品費として使用する予定である。
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