研究課題/領域番号 |
15K04936
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
新井 拓児 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20349830)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 数理ファイナンス / 確率論 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
本研究は、数理ファイナンスにおける金融派生証券の最適ヘッジ戦略に関するものである。特に、代表的な最適ヘッジ戦略であるlocal risk-minimization(LRM)とmean-variance hedging(MVH)を、ジャンプ型確率過程によって記述される非完備市場に対して考察することを目的にしている。より具体的には、Levy過程に対するMalliavin解析を用いて、最適ヘッジ戦略の明示的表現を導出し、さらに高速フーリエ変換をベースとした数値計算法の開発を目指す。 平成29年度では、当初の計画通り、代表的なジャンプ型確率ボラティリティーモデルであるBarndorff-Nielsen and Shephardモデル(BNSモデル)に対するMVHの明示的表現の導出と数値計算法の研究を行った。しかし、論文という形にまとめるに至らなかった。特に、最小分散マルチンゲール測度の導出が難しく、先行研究であるCerny and Kallsen (2007)の結果を用いるなど工夫を凝らしたが解決することができなかった。この課題については平成30年度以降も引き続き研究を行う予定である。 一方、代表的なLevy過程であるnormal inverse Gaussian過程を対数資産価格過程に持つ指数型Levy過程モデルに対して、平成28年度までに開発した高速フーリエ変換ベースの手法を用いて、LRMとMVHの数値計算を行った。実データを用いたパラメータの推定にも取り組んだ。得られた成果を論文「Numerical analysis on quadratic hedging strategies for normal inverse Gaussian models」にまとめ、学術論文雑誌に投稿し受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画調書および平成27年度交付申請書に記述した研究計画に沿って研究を実施したが、論文という形で成果をまとめるに至らなかった。しかし、これは課題の難易度からして想定の範囲内であり、今後も研究を継続することで解決を図りたい。一方、当初予定していた研究成果発表のための国際会議への参加は、学内業務の都合などで実施できなかった。このため、研究期間を延長し、平成30年度内に行う予定で準備を進めている。この分だけ当初予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
BNSモデルに対するMVHの明示的表現の導出と数値計算法の研究を継続する。また、これまでに得られた研究成果を国内外の学術会議で公表し、本研究課題を終了させる予定である。特に国際会議については、既に2件の大規模国際会議に研究発表の申し込みを行い受理されている。2件の会議とは、6月にスウェーデンで開催予定のSPA2018と、7月にアイルランドで開催されるBachelier Finance Societyの10th world congressである。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表を行うために国際会議に参加する予定であったが、学内業務の都合で参加できなかったため、その分の旅費が未使用となった。そこで、事業期間を延長し、6月にスウェーデンで開催予定のSPA2018と、7月にアイルランドで開催されるBachelier Finance Societyの10th world congressなど、国内外の学術会議に参加し研究成果の公表を行う予定である。
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