研究課題/領域番号 |
15K04944
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福泉 麗佳 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00374182)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 解析学 / 非線形偏微分方程式論 / 確率論 / シュレディンガー方程式 / 量子渦 |
研究実績の概要 |
交付申請書で提案したこの研究課題の目的の一つは, 非線形 Schrodinger 方程式にホワイトノイズが摂動に加わった方程式において, 量子渦の挙動の研究を行い, ノイズと渦の関わり, 渦に対してノイズが及ぼす効果を理論的に明らかにするというものである. 申請書提出当時は, 偏微分方程式論的手法により(具体的には, 方程式の制御可能性問題を解くことにより), 例えば, ノイズの強度と比較して渦の崩れの最適時間スケールを理論的に示すことが可能かどうか調べることを, 研究実施の方針として考えていた. しかし, 物理の連携研究者と議論するうちに, 非線形 Schrodinger 方程式にホワイトノイズが摂動に加わった方程式の熱平衡状態における相転移を調べることにより, 量子渦の振る舞いを調査するという考え方があることを知った. そのため, 方程式中にノイズを含む熱的要素を取り込み, それによって生じる熱平衡状態がどのようなものになるかを, 空間一次元でかつ加法的時空ホワイトノイズ, さらには斥力型非線形項という数学的には取扱いが最もシンプルな場合に考察を行った. その結果, 方程式にはある Banach 空間上に台をもつ Gibbs 不変測度が存在し, 時間無限大でとる平衡状態がそのGibbs 不変測度(=熱平衡状態)であるということを証明することができた. 確率非線形 Schrodinger 方程式においては初めての結果と思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当課題の研究目的にある, 非線形 Schrodinger 方程式にホワイトノイズが摂動に加わった方程式について, 量子渦のダイナミクスの研究を行うという点において, 上に述べた平成27年度の研究実績により, 研究を一歩進めることができた. また, 交付申請書にある二つ目の研究目的: 分散係数や媒質がランダムに変化する非線形 Schrodinger 方程式については, 順調に Gubinelli によるラフパスによる手法も連携研究者とともに学び, 研究期間中に結果を出すことを目指すことができそうな状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
過去の研究で行った数値計算プログラムでは, 渦の時間発展を調べたものの, 渦と同じ対称性を保つ場合の時間発展しか技術的に考察できなかった. よって, 任意の時間発展に対する数値計算方法を改善したい. 研究計画通り, R. Duboscq 氏(Toulouse 大学, フランス), I. Danaila 氏 (Rouen 大学, フランス)らBEC 渦の数値計算の専門家と議論するため, 申請者がフランスへ赴く, あるいは彼らを日本へ招聘することを考えている. また, 日本にいる数値計算スキームの研究者とコンタクトを取り, 確率偏微分方程式に対して彼らの手法がどのくらい有効かどうかを調査する. また, 平成27年度の研究実績をより発展させ, 物理で最も興味のある空間3次元の場合に結果を拡張する. 平成28年度9月に京都で予定している非線形分散型方程式の研究集会に共同研究者である de Bouard氏(Ecole Polytechnique, フランス)や Debussche氏 (ENS Rennes, フランス)を招聘し, 講演してもらい議論をする.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究実績で述べたように, 量子渦のダイナミクスの解析手法として熱平衡状態を調査することになった. 結果, それに関連した内容に精通している Arnard Debussche 氏(ENS Rennes, フランス)に助言してもらい, 基礎的な結果を得ることができた. 平成28年度には, 更に, 得られた結果を発展させるため, 急遽 Debussche 氏を交えて, 元来の研究協力者である Anne de Bouard 氏(Ecole Polytechnique, フランス)と3人で日本で議論する機会を持ちたいと考え, 2人の招聘費用の確保を行う必要があった. そのため, 平成27年度当初予定していた国内旅費に係る支出を抑えた.
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次年度使用額の使用計画 |
9月に京都で研究集会「Nonlinear Wave and Dispersive Equations, Kyoto 2016」を行う計画があり(http://www.math.nagoya-u.ac.jp/~tsugawa/kyoto2016/index.html), de Bouard氏, Debussche氏に講演承諾の返事を得ている. さらに, 両氏には引き続き仙台に移動してもらい, 研究代表者との共同研究のため, 仙台に滞在してもらう予定である.
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