研究成果の概要 |
ナノデバイスにおける波の伝わり方(たとえば量子力学的な粒子の動き方)を解析するために使われるモデル方程式の解析を行った. 非線形効果が大きければエネルギー有限なクラスで,基底状態よりエネルギーの低い初期データに関して解が散乱するという事実を厳密に証明した. さらに, 関連する量子ウォークの漸近挙動についても調べた. 正の温度でのボース・アインシュタイン凝縮のモデルである加法的ノイズと散逸項を伴うグロス・ピタエフスキー方程式に関して空間1次元の場合に, Gibbs測度で表される熱平衡状態を構成, 解分布が時間無限大で指数的にGibbs分布に従うことを示した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では, ボース・アインシュタイン凝縮や光ファイバー通信のモデルに現れる, 確率的な摂動を伴う非線形シュレディンガー方程式について, 解の挙動, および摂動の特殊解(定在波・渦など) への影響を理論的に解明し, 物理や工学において期待される現象の数学的実証を行うのが目的である. 本研究の成果により, ナノデバイス中にスリットがある場合に内部を伝搬する波がどのような時間大域的挙動をするのか数学により解明された. また, 熱的効果を考慮したボース・アインシュタイン凝縮モデルの凝縮体波動関数の分布が時間無限大で指数的に Gibbs 分布に収束することも厳密に正当化した.
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