研究課題/領域番号 |
15K04945
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
梅津 健一郎 茨城大学, 教育学部, 教授 (00295453)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 非線形楕円型境界値問題 / concave-convex 型非線形性 / 符号不定変係数 / 分岐解 / ループ形状連続体 / 正値性 / 位相解析的手法 |
研究実績の概要 |
本年度は concave 型及び concave-convex 混合型の非線形性をもつ楕円型境界値問題に対して正値解集合の構造を研究した.方程式の非線形性と付随する符号不定変係数の相互作用が正値解集合に及ぼす効果について考察した.
まず,concave-convex 型のあるクラスに対して,パラメータと関数空間の直積空間において非有界な連続体から成る正値解集合の存在を示した.concave 型がもつ方程式の特異性を克服するために方程式の正則化を行った.この正則化が最も重要なアプローチである.さらに,正則化問題に対して正値解の先験的評価を確立して,ある位相解析的手法を用いることで考察対象の問題の正値解集合の構造を決定した.次に,concave-convex 型の別のクラスに対して,パラメータと関数空間の直積空間においてループ形状をもつ連続体から成る正値解集合の存在を示した.この研究は,やはりループ形状の正値解集合の存在を示した研究(前年度に実施)の中で open question として残っていたケースに対するものである.非線形項のもつ同次性を上手く使い,あるスケール変換を用いて問題解決の糸口を掴んだ.最後に,concave 型非線形性をもつあるクラスに対して,非自明非負解(以下,非自明解)の正値性を研究した.強最大値の原理と boundary point lemma の適用外であるこのクラスに対して,ある連続性の議論を用いて,線形方程式に近い concave 型に対しては非自明解の正値性が成り立つことを示した.
7月に研究協力者である Humberto Ramos Quoirin が来日した.所属研究機関(茨城大学教育学部)において本研究課題についてセミナーを行った.上で記した第2の研究は本セミナーにおける議論に端を発している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果は共同研究者との共同研究による.
概要で述べた第1, 第2の成果を論文にまとめ,国際学術誌に投稿して accept された.これらの成果は Humberto Ramos Quoirin (Universidad de Santiago de Chile) との共同研究による.第3の成果を論文にまとめて現在国際学術誌に投稿中である.この成果は Uriel Kaufmann (Universidad Nacional de Cordoba), Humberto Ramos Quoirin (Universidad de Santiago de Chile) との共同研究による.
第11回AIMS国際会議(7月1日から5日, Orlando, USA)に出席して,特別セッション `New Trends in Nonlinear Partial Differential Equations and Applications (SS36)' において招待講演を行った(7月4日).京都産業大学にて開催された Workshop on reaction diffusion equations and numerical analysis において招待講演を行った(10月8日).ともに講演のテーマはループ形状の連続体からなる正値解集合の存在についてである.2017年日本数学会年会(首都大学東京にて3月24日から27日まで開催)に出席して,函数方程式論分科会において一般講演を行った(3月24日).講演のテーマは concave 型方程式の非自明解の正値性についてである.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の課題として concave-convex 型非線形項の一般化がある.現在までの考察では,非線形性に同次性を仮定している.そこで,同次性を仮定しない,漸近的に concave-convex 性をみたす非線形項に対して類似の結果が成り立つかを考察する.
非線形楕円型境界値問題の正値解集合の構造に関して,有界連続体集合の存在については現在までに mushroom(キノコ形状), loop(ループ形状), isola(島形状) の3種が知られている.concave-convex 型非線形性のもとでは前者2種についてはある条件下で存在を示すことができた.自明解の枝から遊離した島形状の正値解集合が存在するための十分条件の考察が未解決問題として残っている.この問題の解決には方程式にある種の特異性を仮定することが必要であると考える.
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りである.
|
次年度使用額の使用計画 |
概ね計画通りである.
|