最終年度もconcave-convex混合型及びconcave型非線形楕円型境界値問題について研究を行った.非線形問題に内包する符号不定係数と非線形性が正値解集合の存在に果たす役割を明らかにした.本考察は研究協力者 Humberto Ramos Quoirin と Uriel Kaufmann との共同研究による. 前年度の研究の発展として,(プロトタイプである)べき乗型から完全形への一般化を行った.concave-convex型をディリシレ及びノイマン境界条件のもとで考察して,ある条件下でループ形状の有界連続体から成る非自明解集合の存在を示すことに成功した. 次に,concave型の非自明非負解に対する正値性問題を考察した.前年度に考察したノイマン境界条件の場合に対してディリシレ境界条件の場合を研究した.ノイマン条件の場合に現れない,正値解が境界で零点をもつことに起因する困難さに直面したが,符号不定係数に境界上である種の増大度を付加条件として与え,その増大度に適した解のクラスを設定した.結果,正値解を構成することに成功した. 補助事業期間全体を通じて実施した研究の成果を述べる.研究協力者 Ramos Quoirin と Kaufmann との国際共同研究を軸に本研究は行われた.concave-convex混合型及びconcave型非線形楕円型境界値問題の正値解の存在と多重性及びパラメータの変化に従った正値解の挙動を,非線形理論である,分岐解析,変分解析,比較原理に基づく優解劣解の方法を用いて明らかにした.得られた成果について査読付き国際学術誌に共著論文9本を出版した.また,成果は5件の招待講演(内1件は米国で行われた国際会議にて)及び2件の日本数学会一般講演により発表された.concave非線形性の方面では当初の予想を上回る成果をあげることができた.
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