研究課題/領域番号 |
15K04946
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久保 隆徹 筑波大学, 数理物質系, 講師 (90424811)
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研究分担者 |
高安 亮紀 筑波大学, システム情報系, 助教 (60707743)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 最大正則性定理 / 圧力安定化法 / 時間局所解 / 定常解 / 2次元半空間 |
研究実績の概要 |
二相流体に関する自由境界問題や流体の運動は流体力学の基礎方程式であるNavier-Stokes方程式で記述される.Navier-Stokes方程式に関する研究は数学解析においても工学においても興味深い研究である.Navier-Stokes方程式の解析の難しさの1つの要因に,圧力項と非圧縮条件がある.数学解析においてはヘルムホルツ分解を用いて速度場と圧力を分離して方程式を考えることで困難さを回避しているが,ヘルムホルツ分解の可能性には領域の形状が関係しており,一般的な領域に対しては難しい.工学的にはヘルムホルツ分解を考えずに,非圧縮条件を近似した条件を考え,困難さを回避して流体問題のシミュレーションを行っている.しかし,その近似に関する正当性を考えている研究は少ない.そこで今年度はその近似の正当性を考えるべく,近似圧縮条件下でのNavier-Stokes方程式を考えた.対応する線形化問題の解に対する最大正則性定理を導き,非線形問題の時間局所解の一意存在性,ある時刻までの近似解と真の解の最良と期待される誤差評価を導くことができた. また,Navier-Stokes方程式に対して,変形テンソルに対してFourier則ではなくCattaneo則を考慮した問題を考察した.これは変形テンソルに対して時間遅れを考慮した方程式であり,双曲型方程式となるため双曲型Navier-Stokes方程式などと呼ばれている.双曲型Navier-Stokes方程式は全空間では多くの結果がある一方,外部領域においては研究がほとんどない.そのため今年度はその研究の第1段階として,局所エネルギー減衰定理を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究1】半空間の定常解の考察においては,2次元半空間での解表示を正確に行うことに時間がかかったが,無限遠での減衰度が予想していたよりもよくなくなかったため,想定していた方法では存在証明ができなかった.今後は,境界に対して法線方向と接線方向を別に考えて考察を試みたい.
【研究2】自由境界問題に関するスペクトルの非存在範囲の証明については,近似問題の正当性を考察することができた.今後は数値シミュレーションしやすい近似問題において考えていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
【研究1】 定常解の考察を,境界に対して法線方向と接線方向に分けて考察を行い,安定性についても法線方向と接線方向のそれぞれに重みを付けて考察することで考えていきたい. 【研究2】 自由境界問題については,圧縮性・非圧縮性の2相問題の自由境界問題をモデル問題に対してしか考察していないので,有界な領域での問題について考察を行う.また,近似問題の正当性がわかったので,数値シミュレーションしやすい近似問題についてスペクトルの非存在範囲などを考えていきたい.
両研究とも,連携研究者や研究分担者と密な連携をとって,研究を進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月上旬に予定されていた研究会に参加を予定していた講演者が出張をキャンセルした為. 来年度に共同研究者との打ち合わせをする旅費にあてる.
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