研究課題/領域番号 |
15K04957
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
柳沢 卓 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (30192389)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MHD方程式 / 境界値問題 / 定常解 / 安定性 / 自由境界問題 |
研究実績の概要 |
磁気流体力学(MHD)方程式の定常境界値問題に対して、次のことを明らかにした。1.非斉次境界条件下の弱解の構成的存在証明において本質的となるLerayの不等式を、磁場の影響を取り込んだ形で提示した。2.非斉次境界条件下において、1で示したLerayの不等式が成立する為の幾つかの十分条件を境界データに関わる形で与えた。更にこの結果を基に、定常的弱解の存在定理を示した。3.2で得られた定常的弱解の安定性の考察をおこなった。特に、領域の第1Betti数が0でないとき(例えば、領域がトーラスの内部領域からなるとき)、任意の大きさの磁場をもつ安定な定常的弱解が存在することを示した。本結果は、境界値問題の解の構造と領域の位相的構造を明示的に与えている点で興味あるものと考えている。以上の成果は、2つの国際研究集会における招待講演で発表し、論文として取りまとめ中である。 2016年1月末から2月初めにかけてBrescia大学(伊)のPaolo Secchi教授を奈良女子大学に招聘し、MHD方程式の自由境界問題に関する議論を行った。特に、応用上も重要であるトカマクをモデルとする自由境界問題に関する幾つかの研究テーマを見出すことができた。更に、2016年2月3日、4日に奈良女子大学理学部数学科で国際研究集会"Free Boundary Problems in Fluid and Plasma Dynamics"を開催し、Secchi教授を含む国内、海外の著名な研究者と若手研究者に最新の研究成果の報告を行って頂いた。研究集会では活発な議論と情報交換が行われ、カレントな研究分野としての「自由境界問題」の重要性を再認識することができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非斉次境界条件下での定常MHD方程式の存在と安定性に関する研究は当初の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き定常MHD方程式の境界値問題の考察を進めるが、本年度のSecchi教授との議論により「自由境界問題」の重要性を再認識したので、トカマクをモデルとしたMHD方程式に対する自由境界問題の研究も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、Paolo Secchi教授の他にもう1名の研究者を海外から招聘する予定だったが、日程調整がつかず本年度の執行ができなかった為。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度中には、上記の海外研究者を招聘できるように調整していく。
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