研究課題/領域番号 |
15K04960
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
野村 祐司 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (40282818)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シュレーディンガー作用素 / スペクトル / Aharonov-Bohm磁場 / Lifshitz tail / 埋め込まれた固有値 |
研究実績の概要 |
ユークリッド平面上のランダムな Aharonov-Bohm 磁場を持つシュレーディンガー作用素のスペクトルに関する研究を峯拓矢氏と推進し、研究結果を論文にまとめ、現在投稿中である。具体的な研究内容は以下である。このランダム作用素の状態密度関数のスペクトルの下端での漸近挙動が、自由粒子に対応する作用素であるラプラシアンのもの比べ非常に特異なものとなる、所謂 Lifshitz tailと呼ばれる現象に関する結果である。ラプラシアンの状態密度は冪オーダーで減少することがわかっているが、このランダム作用素の場合には指数関数的に減少することを証明した。Aharonov-Bohm 磁場に関しては、Anderson 型、Poisson 型を含むある程度弱い条件下において、2次元デルタ型磁場に対する Hardy 型不等式を援用し、大偏差原理より、上からの減衰を導いた。さらに、磁場に少し条件をつけることにより、下からの弱い評価も得ることができた。この Lifshitz tailという現象は、Anderson 局在と呼ばれるスペクトルの特異な状況にも関係していると考えられており、さらに Wegner 評価に向けて研究を推進中である。 離散シュレーディンガー作用素に台が有限個であるポテンシャルを摂動したときに、本質的スペクトルより小さい固有値の個数をグリーン関数により評価する研究を小栗栖修氏、樋口雄介氏と推進し、その結果を論文にまとめ投稿中である。 また小栗栖修氏、樋口雄介氏とともに離散シュレーディンガー作用素の埋め込まれた固有値とその逆問題に関する研究を推進中であり、部分的な結果を2015年の「夏の作用素論シンポジウム」という研究集会で発表した。より精密な結果を求め、現在研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユークリッド平面上のランダムな Aharonov-Bohm 磁場を持つシュレーディンガー作用素のスペクトルに関する研究を推進し、研究結果を論文にまとめ投稿することができた点が一つ目の理由である。 離散シュレーディンガー作用素に台が有限個であるポテンシャルを摂動したときに、本質的スペクトルより小さい固有値の個数を評価する研究結果を論文にまとめ投稿することができたことが二つ目の理由である。 離散シュレーディンガー作用素の埋め込まれた固有値とその逆問題に関する研究を推進中であり、部分的な結果を出すことができた。さらにこの結果を、2015年の「夏の作用素論シンポジウム」という研究集会で発表することができたことが三つ目の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
ユークリッド平面上のランダムおよび周期的な Aharonov-Bohm 磁場を持つシュレーディンガー作用素のスペクトルに関する研究をさらに推進していく。具体的には、ランダム磁場の場合にはWegner 評価の証明に向けて研究を継続する。周期的磁場の場合には、高位のランダウ準位の閾値における絶対連続スペクトルの出現や、弱磁場下において非可換トーラスがスペクトルに及ぼす影響を調べていく予定である。 離散シュレーディンガー作用素の埋め込まれた固有値の逆問題については、より精密な結果や幾何学的な描像を与えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内業務により、年度末に予定していた日本数学会への出張が不可能となったため、旅費相当の7万円余りが次年度使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度において出張旅費、または必要物品購入費用として使用予定である。
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