移流拡散方程式に分類される Keller-Segel 方程式系は多くのパラメータを有し,その取り方によって半線形型,退化型,特異型が現れる豊富な構造を内在している. 特に退化型の場合,主要項の係数に未知関数が含まれるため一様楕円性が保証されない困難さを生ずる.同方程式系自身は,放物-放物型および放物-楕円型に分類されるが,ともに重要な研究対象であり,適切性を論じる際,それぞれの特性に応じた解析が求められる.Keller-Segel系の解析では,初期条件が小さい場合には時間大域解が存在し,初期条件が大きいときには,初期凝集に依存してその解は有限時刻で爆発し得る. 本年度は,流体項を加味した流体影響下において,上記の解構造を切り分ける初期個体数に関する閾値解析を行い,古典的Keller-Segel系の有する閾値とのずれの創出解析を行い,流体影響により相違する解構造を明らかにした.更に,退化型Keller-Segel系の定常解の存在と一意性をJ.Carrilloとの共同研究により証明した.同研究成果は,国内外から高い評価を受け学術雑誌(Indiana Univ. Math. J.)に掲載された.
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