研究実績の概要 |
二つの滑らかなコンパクトリーマン多様体間の写像に対して, その一階導関数のp乗積分(p > 1), pエネルギー, を考える. その臨界関数(Euler Lagrange方程式の解)をp調和写像, またその勾配流をp調和写像流とよぶ. これらは,(時間発展) p調和方程式系, とくに, 非線形退化特異楕円型(放物型)2階偏微分方程式系の解として定まる. 1. 1 < p < 2の特異の場合について, 最良のデータの条件のもと, p調和写像型非線形退化特異放物型2階偏微分方程式系の解のヘルダー連続性を証明し国際雑誌に掲載した(研究発表参照). 2. さらに, データの最良条件のもと, 解の空間一階導関数のヘルダー評価を証明し国際雑誌に掲載した(研究発表参照). 3. p調和写像流の滑らかな解に対して, ほとんど最良のスケールエネルギーの有界性のもと, 一様に成り立つ新しい(先験的)正則性評価を証明した. このために, p調和写像流に対して, ほとんど最良のスケール関係にあるスケールエネルギーの単調性評価を構築した. この結果は, p=2の場合, 熱作用素によって定義される調和写像流に対する古典的結果を含む, 非線形退化特異放物型作用素からなるp調和写像流に対する正則性の結果である(論文投稿中). 4. p調和写像に関連するある新しい退化特異型エネルギー最小化問題を考案し, 対応する退化特異楕円型2階偏微分方程式系の弱解の正則性を証明した(研究発表参照).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究課題における当年度の研究計画であった, p調和写像流に対するスケールエネルギーの単調性評価を, ほとんど最良のスケール関係のもと構築した. また正則性条件については, スケールエネルギーの単調性評価によって, 対応する定常問題に対する正則性条件と比較して, ほとんど最良のスケールエネルギーの有界性によって正則性評価を証明することができた. しかし, ここで証明した条件は空間大域的なものであり, 今後, 局所化することが課題となる.
|
今後の研究の推進方策 |
1. pエネルギー有界な滑らかなp調和写像流に対して(先験的)局所正則性評価の成り立つための条件を証明する. このために, p調和写像流に対するあるスケールpエネルギー単調性評価を, 最良のスケール関係のもと, 時空局所的に証明する. 重み関数とカットオフ関数を適当に選んで評価する. 2. p調和写像流のpエネルギー有界な滑らかな解の族に対する弱コンパクト性の証明. とくに, 解の族のpエネルギ有限の関数空間における弱収束極限関数が, またp調和写像流の弱解であり, ある閉集合を除いて滑らかであることを証明する. p調和写像流の滑らかな解に対する(先験的)時空局所正則性評価が重要な役割を果たす.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初使用計画していた物品費, 旅費に使用しなかった金額が生じたため. とくに, 研究活動のための使用旅費が当初使用予定の旅費より増加したため, 当初予定していた物品の購入を取りやめた. 一方, 使用する必要のあった旅費が他大学負担によって賄われたため残額が生じた.
|