研究課題/領域番号 |
15K04965
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
壁谷 喜継 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70252757)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 球面上の特異解 / 分岐解 / シュレディンガー半群 / 逆二次のポテンシャル |
研究実績の概要 |
本年度は、球面上の非線形楕円型偏微分方程式の特異解の存在・非存在についての解明、球面上に小さな穴がある領域での非線形楕円型偏微分方程式の正値解の構造の解明と、 逆二次のポテンシャル項をもつ線形熱方程式の定常解と基本解の性質の解明と、3つの問題についての解明をを行った。 初めの問題に関しては、特異解が存在するような非線形べき指数と線形のパラメータの関係を一部明らかにし、数理解析研究所講究録において印刷・公表した。 二番目の問題に関しては、ガウスの超幾何函数の持つ性質を詳細に検討して、各固有値の詳細な漸近展開計算を行い、一般には多重性のある、おのおのの固有値からの分岐解の存在を示した。この結果は査読付き学術論文に投稿して、結果を待っている状態である。 最後の問題については、まずは逆二次のポテンシャルから生じる特徴的な解析の困難さを、従属変数を変換することで(これは次元を変化させることになるが)、特異性のない通常の問題に戻して考察した。それにより、劣臨界 Schrodinger 作用素の場合と、臨界 Schrodinger 作用素の場合で、正値定常解の構造が変わることを示した。臨界 Schrodinger 作用素はある意味、楕円型作用素の「固有値」に対応する場合であることを明確に示した。この定常解の構造の違いが、対応する時間発展問題の基本解の性質に影響を及ぼしていることを示し、精密なな基本解の評価を示した。この結果は、査読付きの外国の学術雑誌である the Proceedings of the London Mathematical Society に掲載されることが決まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
球面上の非線形楕円型偏微分方程式の分岐解の解明に想定よりも時間がかかり、一般化への準備が遅れてしまったため、「やや遅れている」とした。一方で、一般化への準備は、 シュレディンガー半群の計算過程で基本的な部分は得られている。
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今後の研究の推進方策 |
シュレディンガー半群の性質の解明で用いた手法をもとに、一般の回転体表面上の楕円型偏微分方程式にも通用する理論の構築を行う。特に、球面、双曲空間上の楕円型偏微分方程式の正則解を統一的に扱えるような理論の構築を目指す。また、特異解の解明は部分的に解明しただけであるので、正則解の解明と並行して、特異解の構造の解明も進める。さらに、シュレディンガー半群の解析に用いたように、時間発展問題と定常解の関係についても解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
家族の健康状態の都合で、計画していた出張をいくつか取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
取りやめた出張分の旅費を、当初の想定にはなかったが、昨年度末に招聘依頼のあった海外での国際研究集会への旅費として使用する。
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