平成31年ー令和元年度は、平坦でない空間の典型例としての球面上の帽状領域でのスカラー場型非線形楕円型偏微分方程式の Neumann 境界条件下での解の性質を検討した。定数解が存在する方程式であるので、定数解の周りでの線形化方程式をまず解析し、固有値と固有関数を全て調べ上げた。さらに、各線形化固有値から、非定数解が分岐することも解明した。分岐解が分岐する固有値は多重度が1ではないため、方程式の非線形性をうまく使い、有限次元での汎関数の臨界点を探すという工夫が必要であった。また、帽状領域が球面全体を覆っていくという漸近的な状態においては、いくつかの固有値は、球面全体での固有値から分離するが、お互いに微小に離れていることも解明し、それらの多重性も明らかにした。この成果は、明治大学総合理工学部の二宮広和教授、University of Basel の Catherine Bandle 教授との共同研究として、2019年12月発行の日本数学会函数方程式分科会が所掌する国際学術誌である Funkcialaj Ekvacioj に掲載された。 また、領域が球面上の帯状領域である場合を対比として検討し、Laplace-Beltrami 作用素の固有値が、帽状領域と比較してどうなるかを課題として掲げて検討し、帽状領域と同様な場合と異なる場合があることを解明した。この結果は、単著として American Institute of Mathematics が所掌する国際学術誌である Discrete and Continuous Dynamical Systems に2020年4月に掲載された。 さらに、関連する話題として、東京大学の石毛和弘教授、向井晨人博士と共に、逆二次のポテンシャル項をもつ線形熱方程式の解の最大値の挙動について解明した。この結果は、2019年に国際学術誌である Applicable Analysis に掲載された。
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