研究実績の概要 |
1、時間変数についてq-差分, 空間変数について偏微分をもつq-差分偏微分方程式の発散形式解のボレル総和法については, 昨年度の研究で基本的な形のものについては解決されていた。今年度は, この理論をより分かり易い形に整理した。また, その内容を京都大学数理解析研究所でのRIMS共同研究(6月)やポルトガル(リスボン、9月)での国際研究集会で発表した。 2、1階の totally characteristic な非線型偏微分方程式で, 空間変数について確定特異点をもつような方程式について, 特異解の構成を行った。線型部分のある係数が負の場合には, 既に知られた解の一意性の結果(Tahara, Tokyo J. Math., 2008)と合わせることにより, 構成した解ですべての特異解が尽くされることが示された。結果として, 線型部分のある係数が負の場合には, すべての特異解の決定に成功したことになる。議論は古典的な漸近解析を駆使して論じた。条件を満たさないケースには, 多くの解を構成することは出来るが, それらがすべての特異解を尽くしているかどうかは, 今の所, 不明である。 3、A. Lastra教授(Alcala大)と共同で, 高階の totally characteristic な非線型偏微分方程式で, 空間変数について不確定特異点をもつ方程式について, 形式解のMaillet型定理の研究を行った。多くの例を計算した。空間変数についてのGevrey指数に関してはある程度の良い見通しが得られたが, 時間変数のGevrey指数については五里霧中のままである。1階の方程式の場合は、Chen-Luo-Tahara (Ann. Inst. Fourier, 2001)で既に解決されているので、これをモデルにして高階の見通しを立てることは、来年度の研究課題である。
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