研究実績の概要 |
最終年度である2017年度は、部分的な束縛ポテンシャルを含む非線形シュレディンガー方程式の定在波解の強い意味での不安定性について研究を行った。Bellazzini, Boussaid, Jeanjean and Visciglia [BBJV] (2017) は、部分的な束縛ポテンシャルを含む非線形シュレディンガー方程式に関して、非線形項の冪が質量優臨界であっても、ある指数よりも小さければ、安定な定在波解が存在することを示した。その指数は、束縛されている空間の次元が2以上の場合はソボレフの臨界指数と一致するが、次元が1の場合はソボレフの臨界指数より真に小さい。そこで、束縛されている次元が1の場合、[BBJV]の冪に対する条件が最良であるか、という観点から研究を行い、非線形項の冪が [BBJV] の指数以上のとき、すべての基底状態解は強い意味で不安定であることを証明することができた。これにより、安定な定在波解が存在するための[BBJV]の条件が最良であることが明確になった。 また、補助事業期間を通じて、非線形シュレディンガー方程式の孤立波解の安定性と不安定性について研究を行い、非線形光学においてコヒーレント的と呼ばれる、3次の非線形相互作用をもつ、空間1次元の非線形シュレディンガー方程式の2成分連立系の定在波解の軌道安定性と不安定性の分類(川原将太郎氏との共同研究)、微分型非線形シュレディンガー方程式のパラメータ領域の境界における孤立波解の不安定性(Cui Ning 氏、Yifei Wu 氏との共同研究)、調和ポテンシャルを含む非線形シュレディンガー方程式の定在波解の強い意味での不安定性、などについて研究成果を得た。
|