研究課題/領域番号 |
15K04971
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藤家 雪朗 立命館大学, 理工学部, 教授 (00238536)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シュレディンガー作用素 / 共鳴極 / 準古典極限 / WKB解 |
研究実績の概要 |
今年度は主に2つの研究を行った。それぞれについて述べる。 まず第一は、ホモクリニック、ヘテロクリニック軌道によって生成される共鳴の準古典分布の研究である。これはJean-Francois Bony (Univ. Bordeaux), Thierry Ramond (Univ. Pairs 11), Maher Zerzeri (Univ. Paris 13) との共同研究である。この一連の研究の最終段階として、考えるエネルギー超曲面上の捕捉集合が、有限個の双曲型不動点と、それに付随するホモクリニック、ヘテロクリニック軌道からなる場合の共鳴極の準古典分布を明らかにし、250ページにおよぶ大部の論文としてまとめた。現在投稿中である。 もう一つは、一次元連立のシュレディンガー作用素の共鳴の準古典分布を調べる、Andre Martinez (Univ. Bologna) と渡部拓也(立命館大学)との共同研究である。対角成分がシュレディンガー作用素で、非対角成分に小さな相互作用があるとする。二つのポテンシャルが交差する場合に、そのエネルギーの近傍に現れる共鳴極の準古典分布を明らかにした。相互作用は1階の準古典微分作用素とするとき、0階の項が消えない場合については論文として受理され、0階の項が恒等的に0の場合についても、成果が得られた。特に前者の場合は、共鳴の虚部はhの5/3乗のオーダー、後者の場合はhの7/3乗のオーダーであること、およびその主要部の係数がエアリ関数を使って表現できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費の本研究課題で予定していた3つの研究主題のうち、上記の通り2つが成果を得て論文として執筆を終えることができたことは、予定通り、あるいはそれ以上である。第3のスペクトラルシフト関数についても、その端緒となる固有値の交差が起こらない場合については、Marouane Assel, Mouez Dimassi (ともにUniv. Bordeaux )との共同研究によって成果を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
ホモクリニック軌道が生成する共鳴極の分布についての研究はとりあえずひと段落ついたが、これを連立の作用素に拡張する問題、それから散乱行列の漸近挙動を求める問題など、様々な問題に発展させることができる。一方、連立のシュレディンガー作用素の交差エネルギーの近傍での共鳴の分布の問題は、もっと上のエネルギーレベルでの共鳴の分布の問題に対する興味を引き起こす。そしてスペクトルシフト関数の研究も、シュタルク効果を持つ作用素について用いた方法を生かして、連立の作用素の研究を進めつつある。こうして、独立して始めた3つの研究が、連立の作用素、エネルギー交差といったキーワードの元に相関し、一つの大きな研究課題となりつつある。こうした分野の教科書執筆も始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に開催予定のサマースクールに、当初計画していた以上の資金を導入して外国人研究者を招聘することに計画を若干変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由欄に掲載したサマースクールの講師の招聘のための費用、および研究発表する日本人若手研究者、受講生を立命館に旅費の補助をして多数集める。その他課題研究に関連する研究を行っっている外国人研究者を招聘する。
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