研究実績の概要 |
本年度の研究主題は、p-進ロジスティック写像やp-進スメール馬蹄型写像による離散力学系のランダム・カオス性を利用して作成された擬似乱数生成器を用いてランダムグラフ隣接行列を構成し、最も優れた情報伝達性能をもつexpanderグラフであるRamanujan グラフの生成を行なうことである。具体的には、極小のシードである一つのp-進数からp-進カオス写像を利用して擬似乱数列を生成し、この列を含むナップザック型ランダム行列を作成し、さらにLLLアルゴリズムにより簡約基底を持つ擬似ランダム行列を作成した。作成した擬似ランダム行列の各列を連結することにより擬似乱数列を構成し、RMTテストを用いてその乱数度の検証を行なった。さらに、生成された擬似ランダム行列を元にグラフ隣接行列を構成し、その固有値分布を測定することにより、Ramanujanグラフの隣接行列特有の固有値分布との比較検証実験を行なった。本研究で構成される非正則Ramanujanグラフには mild, naive Ramanujan 等がこれまで定義されているが、各非正則グラフの固有値分布を極めて高い確率で満たしていることが検証された。これらの研究結果は、国際研究学会NAO-Asia2018における基調講演で発表され、学術雑誌 Linear and Nonlinear Analysis に掲載予定である。 Ramanujanグラフは耐量子計算機暗号を始めとする情報関連分野における最重要研究課題の一つであるだけでなく、同グラフの構成過程に現れるBruhat-Tits Treeグラフはp-進数論に深く関わりを持ち、さらには数学分野を超えて blackhole の解析などの理論物理分野にも関連している。p-進複雑性解析を基礎とする同グラフの発展的応用研究を今後の最重要課題としている。
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