グラフの因子問題とは、与えられたグラフに対して、特定の性質をみたす全域部分グラフを見つけるという問題である。全域部分グラフとは、与えられたグラフのすべての点と一部の辺からなるグラフのことである。本研究の目的は、次の3点の成果を上げることである。 (1) グラフ全体でもつ構造がグラフの一部分にもあり得るかを研究し、グラフの全体で知られている性質との関連性を追及していく。(2) グラフの木の構造を様々な角度から検証し、その存在定理の解決方法を提示する。(3) 上記2点の融合を提案し、新たなグラフの方向性を示す。本研究最終年度は、平成27、28年度で取り組んだ「グラフ全体でもち得る構造が部分グラフにもあるかを追求し、グラフ全体での結果との関連性」を調べたことによって得られた結果と平成29、30年度で取り組んだ「各点から出る辺の本数を制限した全域木について、グラフの因子理論の観点から、その存在条件について検討」して得られた結果とを自然に融合した全域木の存在証明について取り組んだ。具体的には、次のような計画で研究を進めた。 1. 平成30年度の早い時期に、これまでに得られた結果とその周辺結果を再検討し、MathSciNetやグラフ理論関係図書により、多角的に調査、検討した。これにより、今年度に取り組む課題を明らかにした。2. 十分な調査、検討をしたのち、今年度後半に、証明に取り組んだ。3. 得られた結果を論文としてまとめるとともに、学会、研究集会等で順次口頭発表した。 上記の取り組みの成果として、研究分担者の松原良太氏らとの共同研究において、分岐が少ないグラフの木に関する結果を得ることができた。
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