研究課題/領域番号 |
15K04985
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研究機関 | 小山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐藤 巌 小山工業高等専門学校, 一般科, 教授 (70154036)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グラフ / ゼータ関数 / 量子ウォーク |
研究実績の概要 |
本年度は、グラフと被覆グラフのゼータ関数について、以下の結果を得た。 (1) グラフゼータを利用しての2次体の整数論、単数定理等の整数論のグラフ版の展開の一環として、1974年に、Williamsが整数論におけるMertensの第3定理を拡張した結果のグラフ版を考え、グラフのアベール被覆の場合について、Mertensの第3定理に対応する結果を与えた。論文として、Quaterly Jounal of Mathematicsに掲載された。 (2) グラフのbalanced signed graphをdigraphに拡張して、signed digraphがbalancedであるための必要条件を与えた。また、signed digraphがbalancedであるためには、そのdigraphのゼータ関数とweightedゼータ関数が一致することが、必要十分条件であることを示した。応用として、強連結digraphの構造を考察することによって、signed digraphのbalanced coveringの構造を決定した。論文として、Graphs and Combinatorics に掲載された。 (3) グラフ上のある量子ウォークの時間発展行列と伊原ゼータ関数の行列式表示に現れるedge matrixが転置の関係であるので、その単体的複体量子ウォークへの拡張の一環として、2次元の単体的複体のゼータ関数の定義し、その行列式表示を考察した。日本数学会応用数学分科会やグラフ関係の研究集会にて、口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフやdigraphのゼータ関数の拡張として、digraphのBartholdiゼータ関数の新しい行列式表示、グラフの行列重みのL関数の行列式表示を与えた。また、2次元の単体的複体のゼータ関数を定義し、その行列式表示を与えた。 量子グラフ関連では、Smilanskyの定理をdigraphに拡張した。量子ウォークについては、一般Szegedy遷移行列を定義して、その特性多項式を与え、Grover遷移行列、Szegedy遷移行列等の特性多項式を導いた。また、量子グラフの散乱行列から、量子グラフウォークを定式化して、その遷移行列の特性多項式を導いた。さらに、Grover遷移行列の2乗の正台に関連して、グラフのmodifiedゼータ関数を定義し、オイラー積、母関数表示、行列式表示、極、収束半径を与えた。 整数論のグラフ版の展開の一環として、グラフのアベール被覆の場合について、Mertensの第3定理に対応する結果を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
グラフやdigraphの2変数のBartholdiゼータ関数を、n(≧3)変数のBartholdiゼータ関数に拡張する。また、グラフのmodifiedゼータ関数の素数定理、Chevotarevの定理、跡公式を与える。さらに、無限グラフのedgeゼータ関数や、measurable graphのIharaゼータ関数を、Bartholdiゼータ関数に一般化する。 PGLn(F)やPGSp(4,F)のBruhat-Tits buildingを含む、単体的複体のIharaゼータ関数を定式化する。また、正則グラフと半正則2部グラフの重み付きゼータについてセルバーグ型の跡公式を導き、極の偏角の分布を考察する。 量子グラフについて、spectral determinantに関する種々の公式の別証明等、物理への応用を込めた、グラフゼータの新しい方向付けを考えたい。また、いろいろなグラフゼータを利用して、一般的な遷移行列を定義し、新しい量子ウォークを定式化して、それらの確率の極限分布を模索する。
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